鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

POファイナンス

日経ビジネス2018年4月30日号に、

POファイナンスが紹介されていました。


(ご参考→ https://goo.gl/CtZ5k5


POファイナンスのPOとは、Purchase

Order、すなわち注文書のことで、注文を

受けた会社が融資を受けられる仕組みのこ

とです。


具体的には、仕事の受注があった中小企業

が、城南信用金庫と提携したベンチャー

業にその情報を送り、電子記録債権にしま

す。


そして、城南信金はその電子記録債権を担

保に、受注額の半分(ただし、その割合は

条件によって変動するそうです)を中小企

業に融資をするそうです。


ひとことで言えば、フィンテックを活用し

た債権担保融資です。


この仕組みのメリットは、発注者が大企業

の場合は、担保としての評価が高いので、

低利融資ができたり、融資を受ける会社が

赤字でも融資しやすいというものがありま

す。


しかし、私は、この仕組みはあまり普及し

ないと考えています。


その理由は次のとおりです。


ひとつめは、融資額の受注額に占める割合

が低いということです。


(この融資額の割合が約半分ということに

ついては、担保債権が確実に回収できるか

どうかは、仕事を受注した会社がきちんと

その仕事を遂行できるかどうかという、受

注した会社側の能力にもよるという要因も

あるので、妥当であると思います)


もし、融資額が受注額の半分でも足りない

場合は、その不足分は、結局、従来の方法

で融資を受けなければならず、かえって融

資を受ける側と銀行の事務負担が増えてし

まいます。


もうひとつは、従来の債券担保融資と同じ

ことなのですが、債権担保が融資を促すた

めの、決定的な決め手にはならないという

ことです。


外見的には、銀行は担保が得られるのだか

ら融資をしやすくなるのではないかと考え

られがちですが、頻繁に起きる商取引で発

生する債権は、短期間(一般的には数か月

から、長くても1か年)で回収できるもの

であり、それを担保とすることは融資を受

ける側にとっても融資をする側にとっても

事務負担が大きくなります。


すなわち、もともと、短期間で消滅する債

権は担保にはあまり向いていないというこ

とです。


(だからといって、債権担保がまったく無

意味ということではありません)


そこで、債権担保の法整備が進む前から、

銀行は、受注がある会社には、それを担保

にしなくても、ある程度は回収が確実と見

込んで無担保で融資をするという考え方を

持っています。


ですから、繰り返しになりますが、債権担

保融資については、決して従来は担保がな

かったから融資を受けにくかったものが、

担保を提供できるようになったので融資を

受けやすくなるということにはならないと

私は考えています。


ただ、自己資金が比較的潤沢な会社にとっ

ては、融資額が受注額の約半分でも十分な

場合もあるので、低利で融資が受けられる

POファイナンスはメリットがあると思わ

れます。


また、業況が芳しくない会社でも、PO

ファイナンスは、融資を受けられる確実性

が高いという面でメリットがあると言える

でしょう。


結論として、私は、POファイナンスにつ

いては、融資を受けることに苦心している

会社の救世主にはならないのではないかと

考えてはいるものの、まだ始まったばかり

の仕組みですので、今後の動向を引き続き

注目していきたいと思います。

 

 

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