アマゾンジャパンの立ち上げに関わった林
部健二さんのご著書、「なぜアマゾンは
『今日中』にモノが届くのか 」
( https://amzn.to/2I2w1W7 )を拝読しま
した。
同書の書名は「なぜ『今日中』にモノが届
くのか」となっていますが、内容は、アマ
ゾンの優れた経営の特徴を中心に展開され
ています。
この本から学ぶことはたくさんあります
が、最も注目したことは、アマゾンは倉庫
に100億円の投資をしたということで
す。
同社のこの多額の投資は、いまとなっては
十分に理解できるものですが、従来は倉庫
のような事業に直接関わりのない機能への
投資は少なくすることが常識でした。
でも、2000年に日本で事業を始めたア
マゾンは、それまで、書店にない本は書店
に注文してから約1か月待って手元に届く
ものという常識を覆し、注文した翌日に本
が届くというサービスによって、多くの顧
客の支持を得ました。
すなわち、アマゾンでは、翌日に確実に手
元に本が届くという利便性を提供すること
が競争力を高めており、100億円の投資
は、事業に直接関わりのない機能への投資
ではなく、事業の根幹の部分への投資で
あったということです。
ここまでの内容は、かつては投資すべきで
なかった倉庫への投資が、実は、競争力を
高める武器への投資であったということに
なるのですが、肝の部分はここではないと
私は考えています。
なぜなら、実は、このアマゾンの事業モデ
ルに追随する会社は日本にはほとんど現れ
ていません。
これについて、林部さんは、3つの理由を
挙げておられます。
ひとつは、そもそも通信販売は実店舗を持
たなくする、すなわち投資を少なくするこ
とを目的に行うものという既成概念が強い
というものです。
これについては、考え方の問題なので、議
論するまでもなく、考え方を変えるか変え
ないかということだけのことになります。
ふたつめは、人材への投資に躊躇するとい
うことです。
仮に、日本の会社が倉庫への投資をするこ
とを決断したとしても、設備への投資が優
先され、それを管理する人材への投資は避
けたがっているということです。
詳細な説明は割愛しますが、アマゾンの事
業の仕組みは、単に設備に投資すれば奏功
するのではなく、設備よりもトラブルへの
対処能力、効率化のためのアイディアの捻
出といった、管理者の能力が大切になって
います。
しかし、日本においては、倉庫への投資は
機械が優先という既成概念が大きいようで
す。
3つめはKPI(重要業績評価指標)によ
る管理です。
(KPIについてはこちらを参照してくだ
さい。→ https://goo.gl/J4QYay )
同社では、毎週、KPIを確認しているそ
です。
それくらい頻繁に改善を要する点を確認し
ており、この改善の絶え間ない積み重ねが
競争力をより高めているのでしょう。
ここまで頻繁に改善活動を行う会社は、日
本ではあまり多くないのではないでしょう
か?
結論は、アマゾンは、物流によって競争力
が高い会社に見えますが、実は、高度な経
営のノウハウ(人材への投資、精緻な管理
手法)があるからこそ、物流での競争力が
高まった会社であるということが分かりま
す。
多くの方がご存知のとおり、アマゾンは、
いまは本の通信販売に留まらず、幅広い事
業に展開をしていますが、それも、高度な
経営ノウハウがあるからこそできることで
しょう。
「もの」による事業展開ではなく、「ノウ
ハウ」による事業展開をしている同社は、
まさに21世紀型の会社であると私は考え
ています。
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