鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

働き方改革が進まない理由

最近、働き方改革という言葉をよく耳にす

るようになりましたが、これは、これから

到来する労働力不足に備えて、(1)長時

間労働の解消、(2)正社員と非正規社員

との格差是正、(3)高齢者の就労促進と

いう課題を解決することのようです。


この働き方改革は、労働力不足を克服する

という大義名分はあるものの、実態として

は、現在、限界にきている労働環境の改善

を先延ばしできない状況にあるという事情

も大きいと私は考えています。


明確な根拠は示すことはできませんが、日

本はこれまで経済成長を遂げてきたり、国

際競争に打ち勝ったり、不況を乗り切って

きたりしていますが、それは、生産性の仕

組みを変えるという根本的な改革をおざな

りにし、立場の弱い従業員の方たちに、長

時間労働やサービス残業を強いるなどの安

易な方法によって実践してきた面が大きい

と私は分析しています。


ところで、先日、日経ビジネスに載ってい

た、日本電産会長の永守重信さんのインタ

ビューを読みました。


(ご参考→ https://goo.gl/vn9jNJ


「社内に、働き方改革の発表をしたら、従

業員から一番に来た投書は、『私は毎月

50時間の残業手当を前提にローンを組ん

でいるので、残業がなくなったら、ローン

を返済できなくなります』というものだっ

た。


今は、残業手当が減った分を、半分はボー

ナスで支給し、残りは研修費用に使ってい

る。


ただし、ボーナスは、一律ではなく、生産

性の高い人に多く支払われるようにしてい

る。


2020年には、残業を0にするが、その

ときは生産性の高い人は、残業をしている

現在よりも年収が増えるようにしなければ

ならない」


これはひとつの例ですが、「働き方改革

実現しよう」と社内で声をかければ、表向

きは誰も反対しませんが、従業員の方のほ

とんどは年収が減少することを心配してお

り、残業の減少が収入の減少になることが

分かれば、内心では残業を減らすことには

積極的にはなれないでしょう。


そして、従業員の方からの積極的な協力が

ないままでは、働き方改革はかけ声倒れと

なることでしょう。


そこを、永守さんは、働き方改革が成功し

ても年収は減らないことを明確に打ち出し

ており、しかも、残業をしないですむとい

うことになれば、会社と従業員の利害が一

致し、両者の積極的な取り組みによって改

革が成功につながると考えられます。


ここで、永守さんのお話を引用したのは、

永守さんと同じようなことをすべきという

よりも、会社がやりたいことが、従業員の

方にとって利点がないことであれば、成功

しにくいということの例として示したかっ

たからです。


すべての会社経営者の方とは限りません

が、少なからず、働き方改革という錦の御

旗を掲げて、残業代を減らそうと考える経

営者の方はいると思います。


そのような下心があると、前述のように、

従業員の方との利害は一致せず、働き方改

革は成功しないでしょう。


ちなみに、日本電産では、働き方改革のた

めに、生産工程の革新や自動化を行うなど

1,000億円の投資をするそうです。


永守さんの働き方改革とは、単に、残業を

しなくてすむような工夫をするだけではな

く、多額の設備投資をともなっており、し

かも人件費は残業をしている現在よりも減

らないので、会社の持ち出しの方が多いこ

とになります。


ただ、このようなことをしないと、日本よ

り生産性の高い欧米の会社との競争に勝て

ないと永守さんは考えているそうです。


永守さんは難しい課題にチャレンジしてい

ることに間違いはありませんが、単に難し

い課題ということだけではなく、従業員の

方にとってのメリットも示し、改革に対し

て口だけで指示するのではなく投資もする

ということが、従来、他の会社で見られた

改革と異なる点だと思います。


口先だけの改革なら、経営者はリスクを負

いませんが、永守さんはリスクを負って改

革を実行しようとしています。

 

 

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