鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

臆病になる勇気

日本航空に42年間ご勤務され、現在は、

リスクマネジメントの専門家としてご活躍

されておられる、小林宏之さんのご著書、

「JALで学んだミスをふせぐ仕事術」

( https://amzn.to/2pPEba8 )を拝読いた

しました。


この本は、危機管理にどう対処すべきかと

いうノウハウが満載されており、多くの会

社経営者にとってたいへん参考になる本で

すが、その中でも、私は、「臆病になる勇

気という言葉」が印象に残りました。


この、臆病になる勇気について、小林さん

は、次のような出来事をご紹介しておられ

ました。


昭和41年3月に、カナディアンパシフィ

ック・エアラインの飛行機が、濃霧のため

に、着陸しようとした羽田空港の滑走路の

手前で墜落し、乗員乗客72人のうち、

64人が亡くなるという事故が起きた。


この事故の少し前に、日本航空の飛行機

は、羽田空港への着陸を諦め、福岡空港

向かうことにした。


機長が「濃霧のために、目的地を福岡空港

へ変更します」と機内アナウンスをしたと

き、機内では非難の声が上がった。


しかし、その飛行機が福岡空港へ到着し、

羽田空港での事故のニュースを知らされる

と、乗客は機長を賞賛した、というもので

す。


このエピソードからは、学ぶこと、感じる

ことがたくさんあると思います。


小林さんは、「乗員乗客の命の安全を確保

する」ことを最優先にするには、「危機に

遭遇した場合、みんなに好かれようとか、

よく思われようとはしない」ことが求めら

れるとご指摘されておられます。


そして、日本航空では、小林さんが入社す

る前から、「臆病と言われる勇気を持て」

「機長の判断を尊重する」という社風が定

着していたそうです。


と、ここまで書いた内容は、ほとんどの方

にご賛同いただけることだと思います。


ただ、これは、実践が難しいとも感じてい

ます。


これは、小林さんも述べておられました

が、仮に、前述のエピソードで、カナダの

航空会社の飛行機の事故がなかったとした

ら、目的地を変更した日本航空の機長の判

断は批判されるだけのことになっていたで

しょう。


すなわち、日本航空の機長の判断は、結果

論だったのかもしれないのです。


このように、機長の判断は、結果として、

単に会社の負担を増やすだけのことになる

かもしれないのに、それをを尊重すること

は、特に経営者としては、なかなか難しい

のではないでしょうか?


ただ、経営者が部下に対して結果だけを求

めてばかりいると、部下は、経営者の顔色

を見てばかりで自ら判断することをせず、

組織的な活動ができなくなるばかりか、航

空会社で言えば、安全よりも利益を重視す

る会社に陥ってしまうことになります。


とはいえ、経営者は、株主や銀行からは、

高い利益を得ることを常に求められてお

り、安全と利益の板挟みになる苦しい立場

に立たされています。


ただ、最近は、安全と利益は相反すること

と考える人は少なくなりつつあるとも感じ

ています。


むしろ、安全性を求めることが、会社の信

頼を高め、利益につながるという考えが主

流になりつつあるでしょう。


確かに、安全性を求めたり、機長の判断を

尊重するということは、短い期間では、相

反することもあるかもしれませんが、会社

は長期間活動するという前提で考えれば、

安全性を求めることを最重要の課題とすべ

きでしょう。


そして、経営者の方にとって大切なこと

は、部下に権限移譲をすること、そして、

権限移譲することができるような信頼でき

る部下、有能な部下を育成することだと私

は考えています。

 

 

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