日本酒の獺祭を製造している、旭酒造会長
の桜井博志さんの著書、「勝ち続ける『仕
組み』をつくる獺祭の口ぐせ」
( https://amzn.to/2I8yOtd )を読みまし
た。
この本は、会社経営にかかわる人たちにと
って役立つ、多くの示唆が書かれています
が、私は「マニュアルの先にある『2%』
がすべてを左右する」(52ページ)とい
う言葉が、最も印象に残りました。
伝統的な酒造りは、杜氏の経験と勘によっ
て行われてきましたが、いままで酒造りを
を探すことが難しかったことから、桜井さ
んは、酒造りをマニュアルにし、杜氏でな
い社員で作るようにしたそうです。
そして、同社には、同業者も含めて多くの
見学者が来るそうです。
特に、業界の中では、製造工程の中の「発
行中の温度経過」は公開しないことが常識
らしいのですが、それも公開しているそう
です。
それは、桜井さんは、製造工程を公開した
ことにより、自社の製品を真似されても、
70~80%の完成度の酒しか造れないと
思っているからそうです。
設備や造り方を完全にコピーしても、98
%だと考えているそうです。
その理由について、「残り2%の部分は、
自分たちの頭で考え、自ら行動しないと到
達できない領域です。
私たちも日々2%の領域で格闘し、改善を
繰り返していますから、万一完全にコピー
されたとしても、その差は決して埋まらな
いと自負しています。
失敗を繰り返し、より良い酒へと日々進化
させていく。
そのプロセスを経た結果が『獺祭』です」
と桜井さんは述べておられます。
私は、かつてからPDCAが経営そのもの
と述べておりますが、桜井さんも「失敗を
繰り返し、より良い酒へと日々進化させて
いくプロセスを経た結果が『獺祭』」と述
べておられるように、他社に真似できない
「2%」は、経営そのものであり、これが
競争力の源泉でしょう。
98%が真似できても、それはまがいもの
にすぎず、残りの2%が本物かどうかを決
めることになります。
ですから、私も、事業改善をお手伝いする
会社には、桜井さんの会社が実践している
ように、「PDCAで積み上げた結果は他
社には簡単には真似できず、強力な武器に
なります」とお伝えしています。
ちなみに、獺祭は、平成28年に、虫が混
入していたというアクシデントがありまし
た。
このアクシデントののち、検査をしても
らった保健所の方にも、「衛生面で必要と
思われることは全部していますね」と言わ
れたそうです。
しかし、ラインを見直した結果、酒を瓶に
補充したあと、人の手で瓶にキャップをか
ぶせれば虫が入る可能性がほとんどなくな
るということがわかったそうです。
このことから、桜井さんは、機械を万能視
する、会議を繰り返して衆愚体制になるな
ど、同社組織が思考停止状態、大企業病に
なりかけていた状態と考え、それを反省し
たそうです。
この部分が、まさに、「すべてを左右する
2%」なのだと思います。
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