クライアントさまの中小企業の事業改善の
お手伝いをしていて感じたことなのです
が、なぜ、赤字の原因を調べる方法や、そ
れを改善する方法が知られているのに、赤
字の会社はなくならないのか、すなわち、
赤字の原因の、さらにその原因はなんなの
かということについて考えてみました。
まず、赤字とはどういうことかということ
を、簡単に言えば、収益よりも費用が多い
ということです。
そして、財務分析によって、赤字の原因が
わかり、それにしたがってその詳しい改善
策も判明します。
しかしながら、なぜ、赤字を改善できない
のかというと、私は、大きく2つの原因が
あると思っています。
ひとつは、経営者の方が、自社の業績を会
計の側面を通して分析することに明るくな
いか、または、そのようなことに関心がな
いということです。
ここに誤解が入りやすいのですが、私は、
必ずしも経営者の方が会計の専門知識を身
に着ける必要はないと思っています。
ただし、経営者として意思決定をする情報
を収集したり、それを読み取る程度の能力
は必要だと思います。
すなわち、経営者の方が必ずしも会計が得
意でなくてもよいとは思いますが、苦手の
ままであったり、そもそも見向きもしない
ということでは、経営者の役割を担うこと
はできないと考えています。
希に、経営者の方が、会計について詳しく
なく、かつ、まったく会計の情報を活用し
ていないという会社で、黒字を維持してい
る例がありますが、それはレアケースとい
えるでしょう。
そのような例外的な会社は、もともと、ほ
かに何らかのとびぬけた能力を経営者が
持っている会社であり、一般的には管理す
ることなしに黒字を維持することは難しい
でしょう。
さらに、仮に、事業管理をしていない会社
が黒字になっていたとしても、管理をすれ
ば、さらに黒字額が増えるのではないかと
思います。
話を戻して、会計についてあまり重要でな
いと考えている経営者の方は、管理しなく
ても、単に、事業に取り組んでさえいれ
ば、事業は黒字になると考えているか、業
績がどうであれ、事業を営むということそ
のものの方が重要であると考えているので
しょう。
すなわち、事業を黒字にすることが最優先
と考えていないということが、ひとつめの
原因だと私は考えています。
ふたつめの原因は、心理的なものです。
経営者の方にとって、仕事がなくなるとい
うことは、なんとしても避けたいこという
心理が働くようです。
これについては、かつて、私もそのような
気持ちになったことがあります。
せっかくコンサルタントになったのに、仕
事をしていなければ、コンサルタントとい
えないのではないかという心理が働き、採
算の合わない仕事を受けていました。
しかし、後になって冷静に考えれば、それ
は意味のないどころか、自分に損害をもた
らしたすことになっていました。
採算の合う仕事が見つからないときに、本
当にやらなければならないことは、不採算
の仕事を受けることではなく、採算の合う
仕事をとる努力をすることでした。
そして、経営者の方が、採算の合わない仕
事を受けてしまうもうひとつの要因は、採
算の合わない仕事は直ちに問題が表面化し
ないということも挙げられます。
すなわち、「この仕事は赤字だが、将来は
採算の合う仕事につなげたい」と、赤字の
仕事を受けたことを正当化することがあり
ます。
しかし、その仕事が必ずしも将来の黒字を
もたらすとは限らない、むしろ、ずっと赤
字の取引が続くことの方が多いばかりか、
赤字の仕事を受けた経営者の方が、その相
手との採算管理を実際には行わないという
ことも少なくありません。
さらに問題であることは、その採算の合わ
ない仕事を続けても、そのことが表面化す
るのは決算を迎えてからということです。
月次試算表でしっかり管理していれば別で
すが(そういう会社はそもそも不採算の取
引を受けることもしませんが)、そうでな
い限り、決算を迎えるまでは、前期の決算
が最新の成績であり、心理的に不採算の仕
事を受けてしまいがちです。
このような面からも、月次管理を行う必要
性があると言えます。
今回の記事の結論は、赤字の会社が赤字に
なる原因の原因は、その会社の経営者が自
社を黒字にすることを最優先にしていな
い、すなわち、事業をすることが目的で
あったり、経営者の体面を保つことが優先
されているということです。
これに対して、「現在の日本の経営環境で
は、事業をなかなか黒字にできないから、
そんな建前をきいても意味がない」という
反論があるかもしれません。
しかし、一時的に赤字になることはあると
しても、長期的には事業が黒字にならなけ
れば、経営者は評価されないと思います。
ちょっと厳しいですが、ほとんどの経営者
の方は評価される経営者を目指していると
思います。
そのためには、事業を黒字にすることが最
優先であるという責務からは逃れられない
でしょう。
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