鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

適正な決算書と会社の実態

先日、知り合いの税理士の方から、「顧問

先が粉飾決算をした。


銀行からの評価にどう影響するのか」とい

う質問を受けました。


(その税理士の方の顧問先の粉飾は、税理

士の方も加担したのか、顧問先単独で粉飾

をしたのかはわかりません)


これを説明する前に、適正な決算書と会社

の実態について説明します。


会計を習った方はご理解されると思うので

すが、決算書は必ずしも会社の実態を反映

しているものではありません。


でも、会社の決算書は、税理士の方が作成

(厳密には、税理士の方が「決算報告書」

を作成した後、株主総会でそれが承認して

もらうという手続きがありますが、ここで

は、便宜的に、税理士の方が作成した決算

書とのみ記します)し、税務署もそれにつ

いて、ほぼそのまま受け入れているのだか

ら、決算書に書かれている内容は、会社の

業績がそのまま書かれていると考えている

方も多いようです。


でも、今回は説明は割愛しますが、決算書

は100%客観的に作成することは難しい

し、むしろ、ルールに逸脱しない範囲で自

社に有利な決算書を作ることが一般的に行

われているようです。


自社に有利な決算書を作るとは、利益が多

い会社は税金を少なくしようとする意図が

働いて決算が行われたり、利益が少ないか

赤字の会社は自社の信用を損なわないよう

に利益をなるべく多くしよとする意図が働

いて決算が行われたりします。


ですから、必ずしも正確な表現ではありま

せんが、「適正な決算書」というのは、会

社の実態を忠実に表している決算書という

意味ではなく、会計のルールに逸脱しない

で作成された決算書という意味です。


一方で、銀行は、融資する会社について、

融資したお金が返済される可能性が高いか

どうかということに関心を持っています。


最近は、銀行に「目利き能力」を持つこと

が高く求められるようになり、むしろ、一

見すると融資できそうにない会社であって

も、可能性を探りながら会社の状況を調べ

ようとすることも多いでしょう。


そこで、簡単に言えば、銀行の融資審査で

は、前述の、決算のときの経営者や株主の

意図的な判断を、できるだけ排除した場合

の財務状況を把握しようとしたり、決算書

の粗い情報からその背景にある実情を探っ

たりします。


ここまで、簡単に、適正な決算書と会社の

実態について説明してきました。


そこで、当初の質問にもどりますが、その

質問の回答については、まず、粉飾の程度

により異なってきます。


話は変わりますが、節税と脱税の違いがよ

く話題になりますが、決算対策と粉飾もな

かなか線引きが難しいところがあります。


ただ、銀行から見れば、融資先の決算書は

もともと会社の実態を反映しているものは

ほとんどないと考えているので、それが、

決算対策か粉飾かというのは、それほど大

きな問題ではありません。


恐らく、粉飾をした会社が、そのことが銀

行に知られたとしても、「やはりそうでし

たか」と言われる程度なのではないでしょ

うか?


要は、粉飾にしろ決算対策にしろ、それは

銀行は見込んで融資をする会社を分析して

いるので、ルールの範囲内であるかそうで

ないかということには、あまり融資審査の

「結果」に影響はしません。


ただ、ときには銀行が想定していた以上に

粉飾をしている会社というのもあります。


そのようなときは、新たに判明した粉飾を

加味した上で、新たな方針が決まります。


とはいえ、このように書くと、「銀行はど

うせ粉飾をしても、それを見込んでいるの

だから、多少の粉飾は許されるのか」と考

えてしまうかもしれませんが、粉飾はやは

り問題です。


上述の説明は、銀行職員は融資審査の時点

で、融資相手の粉飾をほぼ見抜いているの

で、粉飾をしたという事実が新たに分かっ

たとしても、それには驚かないということ

を述べたのでであって、粉飾を繰り返す会

社は、その行為によって信頼を失います。


粉飾をする会社は、業績の悪化への対策に

真正面から取り組まず、決算書のうわべだ

けを取り繕っていることになるので、業績

の改善には期待できません。


したがって、冒頭の質問に対しては、「善

後策として、今後は粉飾は厳に慎み、業績

回復に真正面から真摯に取り組む旨を誠意

をもって銀行に伝えるとよいでしょう」と

いう回答をしました。

 

 

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