鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

不二

芥川賞作家で、福島県田村郡三春町の禅寺

臨済宗妙心寺派福聚寺)の住職を務める

玄侑宗久さんが、ポッドキャスト番組で、

「不二」についてお話しておられました。


(ご参考→ https://goo.gl/yeZ3yk


不二とは仏教用語で、対立しているものと

思えるものも、実は、それは自分にとって

必要なものであるという考え方だそうで

す。


その例として、無駄な努力の比喩としてよ

く使われている「賽の河原」のお話しをあ

げておられました。


すなわち「賽の河原とは、三途の川の河原

のことで、そこでは、親より先に亡くなっ

てしまった子どもが、親の供養のための石

塔をつくるために、石を積み上げている


ところが、そこに鬼が現れ、子どもはお地

蔵さんがかくまってくれるので、その場は

やり過ごすことができるものの、鬼は子ど

もが積み上げた石を崩してしまうので、鬼

が去った後は、また子どもは最初から石を

積み上げなければならない。


このとき、お地蔵さんは鬼を退治しないで

子どもをかくまうだけなので、またしばら

くしたら、再び鬼が現れて、積み上げた石

を崩してしまう。


そこで、いつまで経っても子どもは石塔を

完成させることはできない。


このように、お地蔵さんは、あえて、石塔

を完成させるための障害となる鬼を退治し

ないことを、仏教ではよいことととらえて

いる。


なぜなら、人は自分では解決できない課題

に直面することで、心が活発になり、その

ことが望ましいことと考えているからだ。


すなわち、これが、人にとって対立する相

手が必要だという不二という考えだ」とい

うものです。


とはいえ、このような考え方は、すでに多

くの方がご存知のことでしょう。


それを今回あえて記事にしたのは、玄侑さ

んの考え方に、ちょっと真新しさを感じた

からです。


というのは、私も中小企業の事業改善のお

手伝いをしていますが、多くの経営者の方

は、できるだけ余計なことはせず、また、

無駄なお金もかけずに、効率的に事業を進

め、すぐに結果が得られるようにしようと

考えています。


このことは、一見、合理的と考えられるの

ですが、内心は心配なことがあります。


というのは、このような方法では、数年程

度の期間では成功すると思うのですが、長

い目で見ると、うまくいかなくなるのでは

ないかと感じます。


なぜなら、ひとつの目標にだけ向かってい

ると、その経験を他のことに活かす余地が

少なかったり、環境変化への対応ができな

かったりということがあるのではないかと

感じるからです。


事業は数年でやめてしまうという前提なら

ば別ですが、もっと長い期間、事業を続け

たいと考えているのであれば、土台となる

組織そのものを強くすることが必要になる

と私は考えます。


そうであれば、組織を強くするために、イ

エスマンになりそうな人ではなく、あえて

経営者と価値観の異なるタイプの従業員を

雇い入れたり、あえて自分たちが未経験の

事業分野に新規参入したりするということ

をする方が、組織を強くすることになると

思います。


その方が、組織としての学習をすることに

なり、さまざまなことに対処できる能力を

身に着けることができるでしょう。


とはいえ、現実的には短期的な利益も求め

ることも必要なので、組織を強くする活動

と、効率さを求めることの間のどこでバラ

ンスをとればよいのかということが、判断

の難しいところでしょう。


少なくとも、効率を追求するという大義

分だけで、組織の力をつけることを避ける

ことはあまり賢明でないということが、今

回の記事の結論です。

 

 

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