鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

コンサルタントになにを学ぶか

私はお手伝いする会社に対して、「なにを

すればよいか」ということではなく、「な

にをすればよいかということを見つけられ

るようになるには、なにをすればよいか」

ということについて助言をしています。


端的に言えば、課題が解決するための答え

をお教えするのではなく、課題を解決する

ための答えの見つけ方をお教えしていま

す。


なぜこのような回りくどいことをするの

か、コンサルタントが答えを考えないです

むのであればコンサルタントは楽ではない

か、正しく「人のふんどしで相撲をとって

いる」だけではないか、という疑問をお持

ちの方もいると思いますが、このようなこ

とをするのには理由があります。


そのひとつは、事業運営上の課題を解決す

るための答えを見つけることは難しく、ま

た、その答えはひとつではないことから、

それを会社経営者ご自身に見つけてもらう

ことが最良だと私は考えています。


これだけ書くと、「それならコンサルタン

トは要らない」と言われそうですが、その

真意は、単に直感だけで深い根拠もなく導

いた答えではなく、ある程度の時間をかけ

てきちんとした手順に基づいて根拠をもっ

て導いた答えを持たなければ、かえって事

業は迷走してしまうということです。


いまは、慎重に選んだ答えでも、成功する

確率は高くはないので、いかに成功率を高

めるかということが事業の成否のポイント

になっています。


むしろ、「事業を成功させる間違いない回

答がすぐに手に入る」と考えていること自

体、あまり現実的ではないと思います。


そして、コンサルタントの役割は、クライ

アントが正解を見つけるときの精度を高め

るための支援をすることです。


それから、コンサルタントが直接答えを教

えない理由がもうひとつあります。


それは、仮に答えがあるとしても、それを

コンサルタントがすぐに教えてしまうより

も、会社の経営者や従業員が自ら導いた答

えの方が、納得感があり、その答えに基づ

いた活動も能動的に行えるということも挙

げられます。


ここまではやや抽象的なことを書きました

が、経営コンサルタントの古尾谷未央さん

のご著書である、「借りない資金繰り」

( http://amzn.to/2siiCCJ )に改善策を見

つけ出した事例が書かれてあったので、ご

紹介いたします。


その事例は、東京都内に5店舗(現在は3

店舗)を持つ、パンの製造・小売をしてい

る会社の事例です。


その会社は次のような改善を行いました。


(1)工場の閉鎖


5店舗のパンは、工場で製造する方が費用

の面で効率的であるものの、店舗で製造す

る方が、出来立てを提供できること、パン

を製造する従業員が直接顧客と接すること

ができるところにいる方が、よりよい製品

を作ろうとする意欲が湧くことから、工場

を閉鎖して店舗でパンを製造するようにし

たことで、より高い人気のパンを製造する

ことができるようになった。


(2)食パンの前売り券の取り扱い


資金繰りの改善のための手法として始めた

が、予想以上の反響があり、同社の資金繰

り改善に大きく寄与した。


(3)POSデータの活用


POSデータを活用し、いつ、なにが、ど

れだけ売れたかを把握したり、時間帯別の

来店客数を把握していくことで、改善のポ

イントがつかめるようになり、機会損失を

防いで売上を伸ばすことができるように

なった。


これらの改善策は、結果からみると当たり

前のことなのですが、私は、経営者の方や

従業員の方たちが自ら探求して導くという

過程がなければ得られなかったものであ

り、だからこそ貴重な結論でもあると思っ

ています。


そして、このような改善策を見つけ出す活

動のリーダーを担うことや、その仕組みづ

くりが経営者の役割であり、その経営者を

支援することが経営コンサルタントの役割

であるいうことが今回の記事の結論です。


繰り返しになりますが、よく、「誰でもす

ぐに実践できる売上増加法」というものが

目に入ってきますが、それは、ヒットを打

ちたいと考えている野球選手に、単に「プ

ロ野球の首位打者が使っているバットを売

ります」と言っているようなものだと私は

考えています。


経営者の方が、真に解決しなければならな

いことは、首位打者のバットを買うことで

はなく、そのバットを買ったときに、それ

でたくさんヒットを打てるようになるスキ

ルを身に着けることです。


バットを買うだけでヒットが打てるように

なるのであれば、これほど簡単な解決策は

ありません。

 

 

 

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