鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

創業の条件

このような例は少ないのですが、希に、な

いないづくしの条件で創業をご相談される

ことがあります。


例えば、「大学を卒業して間もないが、自

己資金はほどんどなく、販売先のあてもな

いが、社会に役立つ仕事をはじめたい」と

いうものです。


本題からそれますが、「社会に役立つ仕事

をしたい」という要望は、「社会に役立っ

ていない仕事もある」という考え方が前提

になっています。


そもそも、社会に役立たない仕事は事業と

して成り立たないので、「社会に役立つ仕

事がしたい」という要望は、誤った前提条

件での要望であると私は考えています。


話しを戻して、ないないづくしの条件で創

業しようとすることは、よほどのことがな

い限り、成功しないことは明らかなのです

が、なぜ、今回の記事にそれを取り上げた

のかというと、逆に、創業に必要なものが

何なのかということが浮き彫りになると考

えたからです。


冒頭のご相談者の方の例では、キャリアが

ない、お金がない、人脈がないということ

ですが、それでも事業を始めることができ

ると考えているわけです。


すなわち、お金は銀行から融資を受けるこ

とでなんとかなりますが、キャリアも人脈

も不要と考えています。


もちろん、その相談者の方も、キャリアや

人脈があるに越したことはないと考えてい

るとは思いますが、必須ではないと考えて

いるということです。


これを言い換えれば、銀行から開業資金と

しての融資を受け、会社を設立し、事務所

か店舗を借りることができれば、事業を始

めることができると考えているということ

でしょう。


ここで、このような方の認識の誤りは、創

業までこぎつけることをもって、事業が成

功すると考えてしまっていることです。


事業を飛行機に例えれば、創業は、離陸の

ための準備が終わり、滑走路に入ったとい

う状態です。


成功するかどうかは、無事に離陸して、目

標とする高度まで機体を飛ばせるかどうか

によります。


ただ、滑走路に入ることを目標にしてしま

う人は意外と見かけます。


ただし、今回の記事の本旨は、スタートと

ゴールを勘違いしているという指摘ではあ

りません。


本旨は、前述したように、創業に必要なも

のは何かということですが、それは、キャ

リアや人脈に限らず、さまざまなものが考

えられます。


もちろん、キャリアや人脈も大切なのです

が、私は、これまで多くの経営者の方を見

て来て感じることは、信用と意思だと考え

います。


信用については、よく「信用第一」と言わ

れているので、多くの方がご理解されてお

られると思います。


私自身も、創業したときから現在に至って

も信用が足りないと感じており、毎日、信

用を大きくしようともがいています。


約束を守ったり、コンサルタントとしての

品位を疑われるような言動を慎んだり、よ

り大きな取引先との契約をしたりというこ

とを積み重ね、亀の歩みながらも、徐々に

信用を大きくしてきました。


冒頭に述べたご相談者の方の場合、キャリ

アなどがないことから、信用を得ることは

難しく、恐らく融資を受けることもできな

いでしょう。


ふたつめの意思は、決意とか覚悟というも

のです。


この意思は、事業に限らず、何かに取り組

むにあたっては、強いことが望ましいもの

ですが、特に、会社経営者には、さらに強

いものが要求されます。


これは自分にも跳ね返ってくる指摘なので

すが、会社経営者は結果がすべてなので、

事業の成果が赤字になれば、いろいろな言

い分はあったとしても、それは通用しませ

ん。


これは、裏を返せば、結果がすべてという

条件で仕事をするには、それに対応する強

い意思が必要だということです。


よく、赤字の会社の経営者から、赤字の理

由をきくことがあるのですが、その中には

「どんな経営者でもこのような状況で黒字

にすることは不可能だ」というものもあり

ますが、それは本当に避けられなかったこ

となのかと感じるものの方が、圧倒的に多

いと私は感じています。


むしろ、赤字であっても、それは仕方ない

ことだと、半ばあきらめているような方も

います。


と、ここまで書いてきたことも、私が指摘

するまでもないことなのですが、一方で、

準備が足りないのではないかと思われる方

が創業する例も多いので、創業について、

もう少し深く洞察することが必要だという

認識が広まって欲しいと考えています。

 

 

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