鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

過去しか見ない銀行への対策

融資を受けることに苦心している会社経営

者の方からは、よく、「銀行は過去のこと

ばかり見ていて、将来のことは評価してく

れない」という不満を耳にします。


これは、正しい考え方であると、私も思っ

ています。


なぜなら、融資は融資する相手の会社の将

来のために行うものであり、したがって、

融資の審査は、融資する相手の将来の状況

がどうであるかということを対象に行うも

のであるからです。


過去の業績がよい会社が、将来もよいまま

であるとは限らないし、逆に、過去の業績

が悪い会社が、将来も悪いままであるとは

限りません。


しかし、融資審査の最大の難点は、融資を

する相手の将来は、100%正確に予測す

ることができないということです。


そこで、結果的に、事実として変わること

のない過去のデータが有力なものとなって

しまいます。


そうは言っても、過去にとらわれ過ぎるこ

とは問題であり、過去のデータしか見るこ

とができないとはいえ、いかに正確に将来

を予測できるかどうかというところが、銀

行の能力の問われるところです。


ところで、融資を受ける側が、銀行が過去

しか見ないと批判する場合、それは、融資

申込をした会社のこれまでの業績がよくな

く、将来は挽回する自信があるにもかかわ

らず、融資を断られたときに限られている

でしょう。


そのことは、銀行から見ても、避けなけれ

ばならないことなのですが、逆に、過去の

業績がよい会社に、引き続き融資をしたも

のの、その会社の業績が悪化し、融資が回

収できなくなることも、銀行は避けたいと

考えているということです。


すなわち、銀行が、融資をする相手の将来

を正確に予測しなければならない理由は、

業績がよくなる会社に融資をして収益機会

を逃さないようにすることと、業績が悪く

なる会社への融資を回避して損失機会を避

けるようにすることの、2つの目的がある

ということです。


要は、仮に、銀行が融資をする相手の将来

を見通す能力が高まったとして、その結

果、かつては融資を断った相手に融資をす

る判断をする場合もあるし、かつては融資

に応じた相手に融資を断る場合もあるとい

うことです。


これは、銀行の収益に大きく響くことであ

り、融資先の将来を予測する能力が低い

(または、予測することができず、融資に

消極的である)銀行は、収益を得る能力が

低く、早晩、淘汰されるということです。


ですから、もし、銀行が自社に融資をしな

かったときに、その判断が誤っていると考

える場合は、今後、そのような銀行と取引

することを避ければよいわけです。


ただ、これは、今回の記事の結論ではあり

ません。


ここまで説明してきた通り、融資を申し込

んだ側が求めるまでもなく、銀行自身も自

らの収益のために、融資審査においては、

将来の業況を正確に予測しようと努めてい

ます。


ですから、融資の申込のときにするべきこ

とは、将来を正確に予測して欲しいという

要望を出すことよりも、将来を正確に予測

できるための資料の提供や、事実の積み上

げをしておくことの方が大切だということ

です。


それでは、具体的にどのような資料を提供

すればよいのかということについては、別

の機会に説明したいと思いますが、例え

ば、毎月作成する月次決算書も有力な資料

のひとつです。


また、毎月、銀行に対して業況を説明して

おくだけでも、いざというときに、過去の

説明が融資を前向きに検討する材料になり

ます。


このようなことをしても、融資に前向きに

ならない銀行は、前述のように淘汰される

銀行ですから、早めに取引を解消すべきで

しょう。

 

 

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