鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

代表取締役の肩書

よく私が相談を受けることの中に、融資を

受けやすくするには、会社を設立した方が

よいかどうかというものがありますが、こ

れに対しては、私は、あまり関係がないと

回答しています。


その理由は、やや正確性にかけますが、簡

単に述べると、いわゆるオーナー会社は、

社長ひとりが意思決定をするので、そうで

あれば、実態は個人事業主と同じだからと

いうことです。


そうはいっても、創業しようとする方はの

多くは、「株式会社」の設立を望む方が圧

倒的に多いと感じています。


そして、同じ会社であっても、設立費用が

少ない合同会社よりも、設立費用が高い株

式会社にこだわる方がほとんどです。


その理由をきいてみると、株式会社を設立

していないと、取引先から信用されないと

いうことのようです。


私は、そのような思い込みが広く浸透して

いることは好ましくないと考えています

が、実態は、「株式会社は規模が大きい会

社であり、個人事業主よりも信用できる」

と考える人が多いことから、ほとんどの創

業者の方が、株式会社を設立したいという

要望を持つのでしょう。


中には、株式会社を持ちたいが、設立費用

も惜しいので、休眠会社(会社法第472

条に規定されている、その会社に関する登

記が最後にあった日から12年を経過した

株式会社で、一般的には、長期間活動の実

態がない株式会社のこと)を買い取ること

にしたという人もいました。


私は、そのような人には、「休眠会社は、

繰越損失を抱えていたり、消費税や法人住

民税を滞納している会社である可能性が高

いので、銀行からの融資を受けにくいばか

りか、無駄な支出をしなければならなくな

る可能性が高いので、新たに会社を設立す

ることをお薦めする」と助言しています。


また、これは、極端な例ですが、知人のコ

ンサルタントによれば、株式会社を設立し

ていないにもかかわらず、「株式会社●●

●●代表取締役●●●●」という名刺だけ

を印刷して配っている人もいるそうです。


その一方で、株式会社を設立した経営者の

方から、法務局に罰金を取られたときくこ

とがよくあります。


これは、株式会社の取締役の任期(会社法

第332条に規定され、一般的には2か年

ですが、最長で10か年まで)が到来した

にもかかわらず、新たな取締役の選任、ま

たは再任したことを登記することを怠った

ことによる、登記懈怠の過料のことです。


過料は、100万円以下(会社法第976

条)と規定されていますが、実際には2~

3万円のようです。


ところで、このように述べては失礼かもし

れませんが、いちいち取締役を再任し、そ

の登記を行うのは面倒だと考えている経営

者の方は多いのではないかと思います。


一方、個人的なつながりで会社を運営する

ことを前提としている合同会社などでは、

定款で定めた場合を除き、社員(株式会社

の株主兼取締役に相当)に任期はありませ

ん。


あえて株式会社の取締役の任期が定められ

ているのは、株式会社が不特定多数の出資

者(=株主)から出資を得て事業を運営し

ているという前提があるからで、定期的に

株主総会で取締役を選任する手続きが必要

と考えられているからです。


一方で、冒頭で述べたとおり、オーナー会

社では、実態として、社長ひとりが意思決

定を行っているので、株主総会を開くとい

う手続きは煩わしく感じるのでしょう。


そうはいっても、個人事業主合同会社

はなく、株式会社を設立することを選んだ

からには、法律で定められたことは守らな

ければならないことはいうまでもありませ

ん。


今回の記事の結論は、事業を始めるにあ

たって、せっかく株式会社を設立すること

を選んだのであれば、組織的な事業運営を

目指しましょうということです。


法律上の規定がなくても、早晩、事業が大

きくなれば、組織的な事業運営を行うこと

は避けられません。


株式会社の登記をしただけで満足してしま

うことは、会社の登記の時に使った登記印

紙代が、単に「株式会社●●●●代表取締

役●●●●」という肩書を名乗るためだけ

の費用になってしまいます。

 

 

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