鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

成功の要因

私が銀行の渉外係をしていたときに担当し

ていた顧客の楽器店の社長夫人から、つぎ

のようなお話しをきいたことがあります。


「最近は、日本人の有名な演奏家が増えて

きた影響からか、幼稚園生から楽器を習わ

せようとする親が増えている。


そのような人たちのおかげで、うちの売上

が増えるのはうれしいのだけれど、幼いこ

ろから楽器を習わせたからといって、実際

に職業演奏家になれる人はほんの一握りし

かいない。


でも、幼いうちから楽器を習えば、上手な

演奏家になれると思っている人は少なくな

い」というものでした。


この話は、だいぶあとになってから、作家

本田健さんが、2006年に開かれたト

リノオリンピックフィギュアスケート女子

シングルの金メダリストの荒川静香さんに

対して行ったインタビューを聴いたとき

に、再び思い出しました。


その経緯は、次のとおりです。


まず、そのインタビューで、荒川さんは、

「自分はトリノオリンピックで金メダルを

とるまであまり有名ではなかった。


金メダルをとってからマスコミから取材さ

れることが多くなった。


テレビには、幼いころの自分が演技してい

る画像が流されることがあるので、自分が

昔から有名だと思っている人も多いようだ

が、それは、テレビ局が、私の家族が撮影

したビデオテープを借りて流しているので

あって、昔はマスコミからは注目されてい

なかった」というものです。


荒川さんは、1998年の長野オリンピッ

クに出場したり、2004年の世界選手権

フィギュアスケート女子シングルで金メ

ダルをとっていたりしていたため、決して

無名ではなかったとは思います。


でも、トリノオリンピックでは、荒川さん

はアジアで初のフィギュアスケートの金メ

ダリストであったこと、また、当時は24

歳で、オリンピック女子フィギュアスケー

トの史上最年長の金メダリストであったこ

とから、荒川さんが金メダリストになった

ことに多くの人が驚いていたことは、私も

記憶しています。


(ちなみに、荒川さんの金メダルは、トリ

ノオリンピックで、日本が獲得した唯一の

メダルでもありました)


ここまで長々と荒川さんのことを書いてき

ましたが、述べたいことは、多くの人(私

を含めて)は、成功者の成功したあとしか

知っていないということです。


(ちなみに、昨年の夏の、第97回全国高

等学校野球選手権大会で優勝した、作新学

院高等学校野球部の今井達也投手(現在は

西武ライオンズ)は、私の住まいと同じ街

に住んでいて、中学校の後輩でもあります

が、甲子園で優勝するまでは、私は今井さ

んのことは知りませんでした)


他人のことは、身近な人か、有名な人でな

ければ知っていないのは当然なのですが、

問題なのは、仮に、その有名人のように成

功したいと考えたときに、その人が有名に

なったあとのことだけで判断してしまうと

いうことです。


ここで、「だれもそう簡単に荒川静香さん

のようになれるとは思わないだろう」と考

える方が多いと思います。


確かにそうなのですが、私には次のような

経験があります。


すなわち、私が創業しようとしている人の

お手伝いをするとき、その人がなぜこの事

業を始めることにしたのかをきくと、知人

で事業に成功している人(すなわち、ロー

ルモデル)がいるので、その人と同じ事業

をすれば自分も成功できると思ったという

人が意外と多くいるということです。


そのロールモデルが必ずしも荒川さんほど

の有名人であるとは限らないのですが、創

業しようとしている人から見て成功者であ

るという点では共通しています。


そして、その人が創業しようとした動機

は、そのロールモデルが「●●という事業

を行って成功した」というところだけを見

ているときが多いようです。


そこで、「では、なぜ、ロールモデルとす

る人は、その事業に成功したと考えていま

すか」と質問すると、ほとんどの人はそこ

までは分析していないようなので、答えて

もらえることはできません。


とはいえ、周りに目標とする人がいるとい

うことはよいことだと思います。


ただ、成功している人が成功した要因とい

うのはなかなか見えにくいということが今

回の記事の結論です。


また、成功している人はどうやって成功者

になったのかという要因を明確にしたり、

成功者の成功の要因を見えるようにはどう

すればよいのかということをお伝えしたり

することも、コンサルタントの役割だと考

えているので、これらのことができなけれ

ば、必ずしも創業すべきではないというこ

とでもありません。


問題なのは、「知人がこの事業で成功して

いるから、自分も同じ事業をすれば成功す

る」という安易な考え方は、裏を返せば、

事業を選ぶこと以外のことはやらなくても

よいということになってしまうということ

です。


成功する要因は、どういう事業をするのか

ということだけではないということは明ら

かなわけですから、創業するときはきちん

とした事業の分析を怠ることは避けなけれ

ばなりません。

 

 

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