鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

全人仮設

今回は、経済学や経営学が、人をどうとら

えているかということについて述べたいと

思います。


私たちは、経験から、人は有機的な生き物

であり、感情で動くということは理解して

います。


しかし、経済学では、人は、損得「だけ」

で動くものと捉えらえるときがあります。


この、人は損得だけで動くものという考え

方を「経済人仮説」といいます。


例えば、需要曲線は、この経済人仮説によ

るものです。


需要曲線も説明するまでもありませんが、

価格の低い製品はたくさん買おうとする人

がいるけれど、価格が高くなればそれを買

おうとする人が少なくなるということを表

した、横軸が数量、縦軸が価格の座標にひ

かれる右下がりの曲線です。


もちろん、人は損得で動くこともあります

が、それ以外の要因でも動くので、経済人

仮設は必ずしも正しいとは限りません。


ただ、経済の理論を単純化して示すには、

複雑すぎる仮設を使うことの方がなじまな

いため、経済理論においては、経済人仮説

に基づく研究は妥当といえます。


経営学においても、かつて、賃金を高くす

れば、多くの人が働こうとしたり、生産性

が向上すると考えられていた時期がありま

した。


科学的管理法で著名な経営学者のテイラー

の研究は、経済人仮説に基づくものです。


しかし、より精緻な研究を行った、ホーソ

ン実験の研究で有名な、メイヨーらは、人

は、職場での人間関係や信頼関係によって

生産性が変わるという研究結果を公表しま

した。


このような、人間関係で人は動くという考

え方を「社会人仮説」といいます。


この社会人仮説は、より実態に近い仮設に

なっていると思います。


さらに、組織の研究で有名なバーナード

は、人は、物的要因、生物的要因、社会的

要因の影響を受けながら、自らの意思で選

択して行動しているという、「全人仮設」

( Whole Man hypothesis )という考え方を

示しています。


この全人仮設では、人は損得で動く(物的

要因)、人間関係が影響する(社会的要

因)のほか、その人の能力などの要因(生

物的要因)を加味しています。


この全人仮設は、より実態に近い仮設では

あるものの、研究の対象としては複雑であ

り、実務にはなかなか使いにくいと思いま

す。


今回の結論は、これらの仮設を理解して欲

しいということではなく、このように、人

の研究は進んでおり、その研究成果を知る

ことが、より複雑な人を理解しやすいとい

うことです。


書店に行くと、従業員の方に効率的に働い

てもらったり、能力を高めてもらうための

ノウハウがたくさんありますが、それらは

木の枝の先の葉に過ぎません。


このようなノウハウは、数人の従業員の方

をまとめる、リーダーや係長には十分です

が、経営者の方は、もっと幹の部分を学ん

だ上で、枝や葉について学ばなければ、付

け焼刃的な対応を繰り返すことになりかね

ません。

 

 

 

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