鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

おかしな会計

今回は、会計の限界について説明します。


会計は、会社の財務的な側面を表示するた

めのツールですが、それでもさまざまな限

界があるため、「どうして?」と感じるよ

うな点について説明します。

 

(1)1円のバス


乗り合いバスの法定耐用年数は5年です。


一方、一般的に、乗り合いバスは10年~

15年、中には20年も使われることがあ

るそうです。


したがって、6年目以降は、貸借対照表

計上されているバスの価額は、備忘価額の

1円ということも考えられます。


このようなおかしなことにならないよう、

耐用年数を実態に合わせることも考えられ

ますが、会計は保守的な表示をすることが

望ましいという傾向があるため、現状が長

年続けられて来ていると考えられます。

 

(2)甲子園球場の価額は800万円


かつて、甲子園球場の土地の価額は、所有

者の阪神電鉄貸借対照表に約800万円

で計上されていました。


これは、阪神電鉄が大正13年に甲子園球

場を起工する前に取得したときの価額のよ

うです。


会計は保守的に金額を計上するという原則

から、土地の相場が上昇しても、取得価額

のままで計上し続けます。


(ただし、土地の価額の相場が著しく低下

し、回復の見込みがない場合は、貸借対照

表の土地の価額を、相場に合わせることが

あります)


阪神電鉄は、平成18年に、阪急阪神ホー

ルディングスの子会社となり、現在の同社

貸借対照表では阪神甲子園球場の土地の

価額は約380億円と表示されています。


甲子園球場の土地の価額がいきなり380

億円になったわけではありませんが、10

年ほど前では、貸借対照表に計上された価

額と、実際の価額に大きな開きがあったと

いうことになります。

 

(3)会社のパソコンは0円


会社で購入したパソコンは、会社の所有物

ですが、会社の貸借対照表には計上されて

いません。


その理由は、やや複雑なのですが、簡単に

述べれば、1年で価値がなくなるという前

提で会計処理をしているからです。


自動車や機械のような高額な資産は、減価

償却によって、複数年で費用化していきま

すが、パソコンのような少額な資産は、1

か年で償却してしまいます。

 

(4)製造経費は資産


製造経費は、製造業で製品を製造するため

に支出された費用です。


具体的には、水道光熱費減価償却費(製

造に関する資産部分)、外注加工費、租税

効果(製造に関する資産部分)などす。


一般的に経費は、使用した時点で費用にな

りますが、製造業の場合、その経費によっ

て製造された製品が販売されるまでは資産

棚卸資産)として計上され、販売された

ときに費用になります。


材料などの有形のものは、それが形を変え

て製品になっていても、人の目から見て資

産として残っていると捉えられますが、会

計の考え方では、無形であっても、経費は

有形の材料と同じように資産として扱いま

す。

 

(5)未完成の工事でも収益を認識


一般的に、収益が得られるというのは、製

品や商品が販売されたときです。


しかし、高層ビルなど、数年にわたって建

築される建物については、完成して代金を

受取った時点のみで収益を認識する場合、

それを完成させるために工事をしてきた過

去の会計年度の成績を正しく把握すること

ができません。


そこで、一定の要件が満たされる場合、工

事の進行状況に従って、収益を認識するこ

とが、会計上、認められています。


この基準を工事進行基準といいます。


この考え方は、会社の一般的な会計期間が

1か年であることから、それにあわせて、

長期間の工事から得られる収益を配分する

という、会計上の都合による取扱です。

 

今回の結論は、会計には会計の独特の理論

があって、一般的な考え方とかけ離れた取

扱いが行われていることがあります。


ただ、これらは、それなりの合理性があり

ます。


「会計はおかしなことがある」と思う方も

少なくないと思いますが、逆に、なぜその

ようになっているのかということを知るこ

とも、会計への興味を深めるきっかけにな

るのではないかと思います。

 

 

 

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