鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

頭に入っている

今回も、当然すぎるということについて

書きます。


事業の改善のお手伝いをしている会社の

経営者の方と、よく、次のような会話を

します。


「貴社の事業計画書はありますか?」


「それは、私の頭に入っています」


「貴社の資金繰表はありますか?」


「それは、私の頭に入っています」


「貴社の前月の損益計算書はありま

すか?」

「それは、私の頭に入っています」


「それでは、それらの頭の中に入って

いる資料を、来週までに書面にして

おいてください」


「わかりました」


このような会話をしたあと、1週間を

経過しても、ほぼ、書面は完成して

いません。


このように書くと、「頭に入っている

というのは嘘なのだから、そのような

ことはやめるべきだ」と私が指摘

しようとしていると、多くの方は、

お考えになるかもしれません。


しかし、必ずしもそうではありません。


事業の現場に携わっている経営者の

方は、事業の見通しも常に立てている

であろうし、資金繰りもおおよそを

把握しているであろうし、収支も

おおよそが分かっていると思って

います。


ただし、「頭に入っている」という

レベルでは、精度はかなり低いという

ことは事実だと思います。


このような状態は、無借金の会社で

あれば、問題はないと思います。


ただ、数名~数十名の従業員の方を

雇っている、銀行から融資を受けて

いるという、ある程度の組織的な

活動をしている会社では、経営者

だけが事業の情報を頭に入れている

だけでは、不都合なことが起きて

くることは間違いないでしょう。


そこで、その次に問題となってくる

ことは、経営者の方が、資金繰や

収支状況を文書にする時間が確保

できないということです。


とはいえ、「時間を確保できない」と

記載したのは不正確で、優先順位を

誤っているということが私の考えです。


すなわち、事業計画書、月次損益

計算書、資金繰表がなければ、事業

活動を営むことはできないという

ことが私の考えです。


これに対しては「それらがなくても

実際に事業はできる」という反論が

あるかもしれません。


しかし、事業計画書、月次損益

計算書、資金繰表なしで事業をして

いるとすれば、それは成り行きで

事業をしているだけで、きちんと

経営者の意図するところを経営者の

管理のもとに事業が営まれている

とは言えないでしょう。


そして、そのような主体性のない

事業は、早晩、行き詰ることは

間違いないでしょう。


また、事業計画書などを書面にする

ことによって、計画に矛盾点や思い

違いはないかということが明確に

なることで、より精緻な指示ができる

ようになったり、従業員や銀行の間で

情報が共有化されて、より、組織的な

活動ができるようになります。


このようなことは理解はしてもらえる

ものの、これを実践するには、もう

ひとつ、心理的な壁があると思います。


それは、経営者の方が、数字が苦手で

あったり、文章を書くことが苦手で

あったりすることです。


これについては、税理士の方や銀行

職員などの専門家の助力を得るか、

できれば、経営者ご自身が数字に強く

なったり、思いを文字にすることが

できるようになる能力を身に付ける

ことをお薦めしたいと思います。

 

 

 

 

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