私の知人の税理士さんに、急速に事業を
拡大している方がいます。
その方の特徴として、目標とする先輩
税理士さんの事務所を見学し、よいと
思ったことを、自分の事務所でも
採り入れているということです。
その方とは私も親しくしていただいて
いるので、ときどき、融資に関する
お問い合わせをうけたり、顧問先の
紹介を受けたりしています。
そして、その方にとって私のような
ものとは、業務提携をしていることを
書面で明確にしておくべきだという
理由で、私に対して契約書を交わして
欲しいと依頼を受けました。
これも、先輩の事務所をお手本にした
からだということです。
ところで、事業をはじめたばかりの
ときは、さまざまな取引相手は、
ほぼ、経営者の方の個人的な縁故が
ある人が中心になると思います。
ですから、継続的な取引をする場合で
あっても、基本契約書を結んでから
取引を始めるということをする場合は
少ないでしょう。
そして、そのような相手とは、もし
問題が起きても、お互いに顔見知りで
あることから、細かい取り決めが
できていなくても、円満に解決できる
ことが多く、基本契約書の必要性を
感じることはあまりないでしょう。
しかし、自社の事業が大きくなった
ときは、取引を始めたころのように、
経営者同士で話し合うということが
難しくなってきます。
そこで、取引条件、支払条件などを
きちんと書面に記載した契約書を
交わしておくことが大切になります。
ここで書いたことは当然のことなの
ですが、創業後間もない時期には、
経営者の個人的なつながりで取引を
することができるので、契約書を
交わすことはあまりないようです。
では、取引先と契約書を交わすように
すれば、事業は大きくなるのかという
質問をしたくなる方がいらっしゃると
思います。
この質問に対する回答は「Yes」
です。
契約書を交わさない取引ばかりだと、
経営者の方は、はずっと事業現場から
離れません。
しかし、契約書があるだけでも、
経営者の方は事業現場を部下に任せる
ことができるようになります。
このようにすることで、経営者の
方は、事業ではなく、会社の運営に
注力できるようになり、事業は拡大
していくものと私は考えています。
もちろん、前述の税理士の方の事務所が
大きくなった要因は、協力者と契約書を
交わすようになったことだけではあり
ません。
また、取引先と契約書を交わすだけ
では、事業は大きくなりません。
ただ、そのようなことをすることで、
「顔」での商売が「契約書」に基づく
商売になるので、のびしろが大きく
なるということはいえるでしょう。
契約書を交わすことは、面倒なことの
ように感じられるかもしれませんが、
会社という組織を組織らしくする
重要な要素のひとつと言えると
私は考えています。