鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

コアコンピタンスとUSP

最近、会社の強みを指して、コアコンピ

タンス、または、USPという言葉が

使われているのですが、私としては

おかしい使われ方だと思うので、今回は

両者について解説したいと思います。


まず、コアコンピタンスとは、米国の

経営学者のハメルと、インド生まれの

経営学者のプラハラードが提唱した

考え方で、中核能力と訳されます。


コアコンピタンスの指す強みは、単に

「技術力が高い」とか「スキルが高い」

というものではなく、もっと本源的な

「顧客に特定の利益をもたらす一連の

スキルや技術」と定義されています。


そして、両氏は、ソニーを例に挙げ、

同社のコアコンピタンスは「小型化」で、

顧客の利益とは「携帯性」であると指摘

しています。


こして、このようなコアコンピ

タンスの要件として、つぎの3つを

あげています。


(1)顧客から認知される価値を

持っている


(2)競合他社との違いがある


(3)新製品や新サービスを産み出す

ことができる


定義は抽象的な面もありますが、単に、

「自社の強み=コアコンピタンス」では

ないということは明確です。


会社によっては、コアコンピタンス

持っていないこともありますので、

「あなたの会社のコアコンピタンス

どのようなものですか」という質問は

不適切で、「あなたの会社にコア

コンピタンスはありますか。ある

場合は、どのようなものですか」と

いう質問にすべきでしょう。


つぎに、USPですが、これは

Unique Selling Propositionの略語で、

独自の売りの提案と訳されます。


これは、自社製品を分かりやすく顧客に

伝えるための手段として、利用される

ようになったものです。


その例として著名なものは、ドミノピザの

「30分以内に届かなければ無料」という

触れ込みで、食品の本来の品質である味・

量・価格という要素とは無関係な点に

焦点をあててマーケティング活動を行い、

成功を収めました。


このUSPを使ったマーケティング活動は

小さな会社に適しているといえます。


なぜなら、一つの特徴で顧客を引き付ける

ことが可能だからです。


例えば、「鍵の紛失や閉じ込みに24時間

365日出張して対応」というサービスを

している会社があります。


「鍵の販売」という面では大手と真正面

から対抗することになりますが、「24

時間365日出張して対応」という緊急性

への需要については、小回りのきく小さな

会社の得意とするところでしょう。


このようなUSPを打ち出せれば、小さな

会社が活躍できる機会が大きく広がる

でしょう。


話しを戻して、コアコンピタンスは中核

能力であり、USPは独自の売りの提案

ということで、両者は性質の異なるもの

です。


そして、コアコンピタンスは、会社の

強みの一種であり、会社の強みと言い

間違えられやすいとは思いますが、

USPは提案なので、それは直接に

会社の強みを指すものではないでしょう。


ただ、USPは、会社の強みがあることが

前提になっていると誤認し、そのことから

USPは強みを指すものと誤用される

ようになったのかもしれません。


とはいえ、私は、ここで「言葉を正しく

使いましょう」ということを伝えたいと

考えているわけではありません。


言葉は、しばしば、当初の意味と別の

意味で使われることがあります。


例えば、ゴーイングコンサーンは、

本来の意味とは別の意味で使われる

ことがあります。


ゴーイングコンサーンは、単に、会社の

事業が半永久的に継続する前提という

意味でした。


例えば、会社が機械を購入した時、その

購入代金のすべてを、購入したときの

会計年度の費用とせずに、耐用年数に

わたって費用化する減価償却は、会社の

事業が半永久的に継続するという前提が

あるからで、ゴーイングコンサーンとは

単に、その前提のことに過ぎません。


しかし、現在では、「事業を継続させな

ければならないという会社が担うべき

使命・責任」や、「事業を継続している

会社」ということを指すようにもなって

きています。


ですから、徐々に、コアコンピタンス

USPは、会社の強みを指す言葉として

定着していくかもしれません。


ただ、私の疑問は、なぜ、会社の強みを

コアコンピタンスやUSPと言い換える

必要があるのかということです。


恐らく、「わが社の強みは…」という

よりも「わが社のコアコンピタンスは…」

ということの方が聞こえがよいからでは

ないでしょうか。


これも、当初は厳密なコアコンピタンス

持っていない会社が、その後、製品開発に

注力して、本当のコアコンピタンス

手に入れるとすれば問題はないでしょう。


ただし、わざわざ言い換える必要のない

単なる強みを、あえて言葉だけはコア

コンピタンスと言い換えておきながら、

表面的なことだけにこだわるものの、

中身がともなわないような状況を続けて

しまうとすれば、これは避けなければ

ならないでしょう。

 

 

 

 

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