「同床異夢」というのはちょっと大げさ
ですが、私がフリーランスになった
ばかりのころは、よく、数人の人たちと
共同で事業をしようという話で盛り上がる
ことがよくありました。
私の場合、中小企業診断士でしたので、
中小企業診断士の人たち同士といっしょに
事業を進めようとしたり、税理士や社会
保険労務士の方たちともいっしょに事業を
進めようとしたりしたこともありました。
しかし、それらはうまく行きませんでした。
なぜかといえば、しっかりと役割分担を
決めていなかったからです。
複数の人で集まった時は、「これを皆で
いっしょにやったらうまくいきそう」と
話が盛り上がるのですが、そういう
ときは、おのおの自分に都合のいいように
しか考えていません。
実際に始めてみると、皆、自分のやりたい
こと以外はやらず、残った面倒な仕事は
誰もやらないので、結局、失敗に終わって
しまいます。
実は、このようなことは、私が会社勤務
時代にも経験しています。
会社員時代は、よくあることですが、
特定のプロジェクトを実行するときに、
複数の部から従業員が選抜されて
プロジェクトチームが結制されることが
しばしばありました。
とはいえ、プロジェクトチームに
加わっても、メンバーはそれぞれ、本来の
所属部の仕事も抱えているので、時間に
余裕があるわけではありません。
ですから、プロジェクトチームでは
メンバーの間で仕事の押し付け合いが
起きてしまいがちです。
そこで、プロジェクトチームを組むときは
最初にしっかりと役割分担を決めることが
求められていました。
ここまで記事を書いてきて、私は、
言葉を思い出します。
鍵山さんは、「社長の仕事」として、次の
ように述べておられます。
「社長現役時代の私の仕事は、会社の基本
方針を示すことと、底辺の仕事を受け持つ
ことでした。
中間の仕事は、すべて社員に任せてきま
した。
基本方針とは、『うちの会社はこうあって
ほしい』とか『社員はこうあってほしい』
というようなことです。
底辺の仕事とは、掃除とか洗車、後かた
づけ、倉庫の整理整頓といったようなこと
です」
すなわち、会社の基本方針を決めるという
最も重い仕事と、掃除や後かたづけという
誰もやりたがらない仕事が社長の仕事
ということです。
先ほど、プロジェクトチームについて述べ
ましたが、プロジェクトチームもひとつの
会社と考えれば、リーダーは重い仕事と
誰もやりたがらない仕事をしなければ
ならないということです。
このことも多くの方が理解されることで
ありますが、やはり、それを実践して
いる人は少ないようです。
これは、裏を返せば、鍵山さんのような
考え方を持てば、事業は成功しやすいと
いうことです。
プロジェクトや会社には、いろいろな
ことをしたいと思う人が集まります。
だからこそ、多くの人がやりたい仕事
以外の仕事をやりたいと思える人こそ、
成功するプロジェクトや会社のリーダーに
なれると思います。