先日、民法の契約や債権の分野で、明治
29年の制定以来の大改正について、
国会に提出されたというニュースが
流れました。
この中で、事業のための融資の保証に
ついては、公証人が保証の意思を確認
することとする旨(改正案第465条の
6 ご参考→ https://goo.gl/9GLVyc )
の改正が行われますが、実務上は
ほとんど影響はないと私は考えています。
なぜなら、その公証人が保証の意思を確認
しなければならない場合は、保証人がその
会社の役員等である場合は除かれるから
です。(同第465条の9)
要は、公証人による保証の意思の確認は
いわゆる第三者による保証のときだけで、
現在も、第三者による保証はあまり
行われていないからです。
よって、今回の記事は、これが結論で
あり、ここで終わることとなりますが、
せっかくですので、個人保証に関する
誤解について書きたいと思います。
最も多い誤解は、銀行は、なるべく多くの
保証人をつけておき、融資が返済されなく
なったら、その保証人から融資を返済して
もらおうと考えているということです。
保証人の役割は、借入した本人が返済でき
なくなったときに、代わりに借入金を返済
することなので、そのように思われがち
ですが、実際は、その逆のことを考えて
います。
むしろ、保証人から返済してもらわな
ければならないようなことになることが
分かっていれば、最初から、融資をする
ことはしようとしません。
銀行としては、融資した会社の業績が
好調を続け、融資した会社や保証人に
督促することなく返済されることを
望んでいます。
というのも、保証人からの回収には、
労力が大きいということを銀行は
知っているからです。
ただ、当初は、安心して融資できると
思って融資した相手が、不測の事態に
よって融資の返済ができなくなった
場合は、やむなく保証人に返済を要請
することになりますが、なるべくなら
このようなことにはならないように
なることを銀行は望んでいます。
もうひとつ触れておきたいことは、
経営者の保証についてです。
よく、経営者の方は、「会社の借入が
返済できなくなれば、経営者の財産を
返済にあてなければならないことは
分かるが、自宅は失わないように
したい」という希望をもっておられる
ことです。
このことは、残念ながら避けることは
できないのですが、これについては、
保証人が自宅を失わなくてすむように
するにはどうすればよいかということに
ついて考えるよりは、経営者の方が
保証人にならなくてすめば、経営者の
方が自宅を失うことも避けられることに
なります。
(とはいえ、万一、会社の借入が返済
できないような状態になるときは、
経営者の方が保証人の立場としてでは
なく、会社の金策のために経営者の
個人の財産を会社につぎこみ、結果と
して財産を失ってしまうことになる
ことも多いと考えられますが、ここでは
銀行と社長の関係だけに焦点をあてて
話しを進めます)
現在は、銀行が社長を保証人から外す
ことにはあまり否定的ではないようです。
とはいえ、どんな会社でも経営者を保証人
から外すというわけではなく、おおよそ
3つの条件があります。
( ご参考 https://goo.gl/l0j4OM )
ひとつめは、会社の業績がよいこと。
ふたつめは、会社の情報開示が適切に
行われていること。言い換えれば、
「中小企業の会計に関する指針」
( https://goo.gl/3Q7PZL )などに
したがって決算書が作成されていること。
みっつめは、会社と社長の財布がきちんと
わかれていること。
このようなことを書くと、「銀行の
ために、このようなことをしなければ
ならないのか」と感じる経営者の方も
いらっしゃると思います。
しかし、これらのことは、会社が大きく
なれば、自ら行わなければならないこと
でもあります。
会社の社会での存在が大きくなれば、
きちんとした体制が必要になるから
であり、上場する会社は、もっと厳しい
基準を満たさなければなりません。
これらをひとことで言えば、きちんとした
会社になれば、銀行も経営者保証を外す
ことに協力するということです。