鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

銀行は過去にこだわる

中小企業経営者の方からの銀行への不満の

ひとつは、過去の決算が赤字だからという

ことで、これから挽回しようという意気

込みを抱いても、なかなか前向きに評価

してくれず、融資に応じてもらいにくい

というものがあります。


そういう面では、なるべく赤字は計上

しないことが得策です。


とはいえ、粉飾決算をすることは避けな

ければなりません。


また、単に、減価償却費を行わずに、

表面的に利益を計上しても、銀行側は

前期まで計上していた減価償却費と同等の

金額を利益から差し引いた金額を、実質の

利益とみるので、この方法も効果はあり

ません。


同様に、役員報酬を減額するという

方法も、減価償却費と同じと考えることが

できますが、銀行によっては、決算書上の

利益と役員報酬の合計額を実質利益とみて

いる場合もあるので、役員報酬を減額して

利益を確保することは多少は効果がある

かもしれません。


他に考えられる方法としては、期末に、

赤字になる可能性が出てきたら、利益が

薄くなっても、商品の値下げによる駆け

込み販売をして、何とか利益を得る

ことは、まったく何もしないことよりも

効果があるでしょう。


また、実態は変わらないものの、簿価

よりも価額の高い固定資産を売却し、

特別利益を計上することも、それで

黒字になるのであれば、得策と言える

でしょう。


ところで、のちのち融資を受けやすくして

おきたいという観点からは、ある程度

業績がよいときに、多めの融資を受けて

おくということは、ある程度の効果が

あります。


融資の承認というのは、本来は、その時点

での会社の業況で判断すべきことなの

ですが、それ以外にも、実際に融資取引を

してみないと分からないこともあります。


そのひとつが、延滞せずに融資返済を

するかどうかということです。


きちんとお金の管理をしている会社は延滞

することはめったにありません。


中には、「自社は延滞は一回もない」と

いうことを自慢にしている会社もあり

ます。


しかし、お金の管理が苦手な会社は、

融資の延滞も起きがちです。


そういった会社は、次の融資の申し込みが

あったときは、当然、判断に迷う要因に

なります。


ですから、すぐに必要がない場合でも、

ある程度のまとまった金額の融資を

受けておき、延滞せずに返済を続けて

いると、本当に融資が必要な時にも、

融資を受けやすくなります。


とはいえ、「延滞しないことを証明する

ためだけに、融資を受けておくという

ことはばかばかしい」と考える方もいる

でしょう。


この、過去の融資実績には、もうひとつの

効果があります。


それは、例えば、5千万円の融資を行って

3千万円まで返済が進んだ時、銀行はあと

2千万円を融資しても安心だという心理が

働きます。


これは、前述のとおり、融資の判断は、

その時点の会社の業況で判断すべきなの

ですが、やはり、過去の融資額の最大額

までは融資をしても返済してもらう

ことができそうだと思ってしまいます。


これも、逆の意味で、銀行は過去に

こだわっているといえるでしょう。

 

 

 

 

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