先日、ラジオ番組で、日本電産会長の
聴きました。
インタビューの内容は、日本電産で
残業を0にするという取り組みを
していることに関するものでした。
永守さんは、
「残業をなくすことによって、
日本電産の事業を生産性の高いものに
していくことが目的。残業をなくす
ことは、あくまでその手段である」と
述べています。
しかし、インタビューする人や、
番組を聴いていたリスナーからは、
「どうすれば残業をなくせるのか」
「残業をなくしても大丈夫なのか」
といった、嚙み合わない質問を
することもありました。
これを聴いて、私はトップの考えを
現場に伝えることの難しさを改めて
感じました。
私が、かつて、勤めていた会社でも、
従業員数を減らさざるを得ない
状況で、業績を維持し、かつ、残業を
しないことが課題になっていました。
しかしながら、なかなか残業が
減らないことから、経営者から、
残業をするなという指示が出ました。
そうすると、残業は減りましたが、
仕事の進捗は遅れ気味になりました。
これに対し、経営者から仕事の納期を
守れという指示が出ると、残業が
増えてしまいました。
こういったことの繰り返しが
起きました。
働く側は、目の前の課題をこなす
だけのことしかせず、増加する
仕事を短時間で終わらせるという
二律背反する難しい課題には
なかなか取り組みませんでした。
こうなることの要因はいくつも
あると思いますが、そのひとつは、
トップの指示の意図を深く理解
しないということです。
もちろん、すべての職員が理解
できなかったということでは
なかったと思いますが、組織
全体での行動では、理解して
いない職員が少しでもいると、
前述のような結果となって
現れるのでしょう。
ここで伝えたいのは、
経営者の方は、難しい課題を
従業員に与える場合、
それを理解できるような能力を
持つまでに育成していなければ、
経営者の意図を汲み取って、
その通りに動いてもらうことも
難しいということです。
私が事業改善をお手伝いしてきた
中小企業でも、社長は事業改善を
するための工夫をいろいろ考えて
いるものの、従業員の方の関心は
他のところにあり、社長が指示を
出してもなかなか従業員の方に
理解してもらえず、からまわり
しているという状況を見ています。
経営者というのは、どうすれば
よいかという工夫を考えることは
行うものの、それを受け入れる
能力のある組織作りにはなかなか
時間や労力は割きません。
これは、人は、
「相手は自分の考えていることは
理解してくれているはずだ」という、
誤解をしやすいことが原因でしょう。
もちろん、
経営者の考えを理解しようとする
努力も、従業員の方には求められ
ますが、そういった士気を向上
させることも、経営者側の役割と
言えるでしょう。
これは当りまえのことなのですが、
事業を改善しようとするのであれば、
どういった工夫をすればよいかと
いうことを考えるだけでなく、
それを実践する従業員の方たちの
能力の向上も、普段から行っていく
ことが大切だということを改めて
感じました。