鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

本当の需要

よく、自社製品の販売を促すために、

プロスペクト理論による

キャッチフレーズを薦める人を

見かけます。


プロスペクト理論の典型的な例は、

コインを投げて表がでれば、

20,000円がもらえるが、

裏が出れば何ももらえない。


ただし、コインを投げないという

選択をすれば、その代わりに、

5,000円をもらえるという

状況で、多くの人は、コインを

投げないという選択をするという

人の心理的な性質を指します。


数学的には、

コインを投げることの方が、

期待値(=20,000円×50%

=10,000円)は大きいけれど、

確実に5,000円をもらう、

すなわち、損しないことを選択する

ということです。


このような、損をしないように

しようとする消費者の心理を

利用する商品やサービスは、

すでにたくさん世の中に出回って

いることは言及するまでもありません。


そういう私も、トクホ製品を

ついつい買ってしまいます。


「脂肪の吸収を抑える効果がある」

などという表示があると、

メタボ気味のものとして、

そのような飲みものを飲むことで、

少し安心してすることができます。


でも、メタボな人は、トクホ製品で

根本的な課題を解決することは

できません。


本当は、適度な運動をしたり、

きちんとした食事をとらなければ、

健康な体は得られません。


商品を批判することはしませんが、

トクホの飲みものを飲むことは、

気休めにすぎないのです。


コンサルタントの中にも、

「銀行から確実に融資を受けられる

ノウハウ」をウリにしている人を

しばしば見かけます。


私は、銀行で働いていたことから、

銀行は融資額を増やそうとしており、

融資を受けられないということは

考えにくいと思っています。


もちろん、すべての会社が融資を

受けられるわけではなく、業績が

赤字の場合は、融資を断られる

ことがあります。


ですから、

融資を受けられない会社は、

融資を受けられないことが

問題なのではなく、

業績が赤字であることが

問題なのです。


ところが、

「融資を受けられるようになる

ノウハウをお教えします」

という人が目の前に現れたら、

自社の赤字の状況には目を向けず、

融資を受けられることにだけ

目を向けてしまい、

融資を受けることができれば

課題を解決したことになると

考えてしまう人が増えて

しまうでしょう。


銀行は、

業況が良い会社には融資をします。


ですから、業況がよければ、

融資を受けることができるので、

融資を受けるために特別な

ノウハウは必要ないと

私は考えています。


甘言につられてしまう経営者も

問題かもしれませんが、

不要なノウハウを提供しようと

する方も、あまり賢くないと

私は考えています。


というのは、

甘言につられてしまう経営者の

経営する会社は、遠くない将来、

事業が行き詰り、短い期間しか

顧客になれないとうことです。


話をもどすと、

不安をあおるキャッチフレーズに

よって、売上を一時的に伸ばす

ことができるかもしれません。


でも、自社の販売する商品が

顧客の真の課題を解決する

ものでなければ、その顧客との

取引は長続きせず、結果として、

自社の売上もあまり伸ばせなく

なります。


キャッチフレーズを活用する

ことも有効なときもありますが、

それは、自社の商品が本当に

顧客に必要なものであるという

ことが前提でしょう。


キャッチフレーズで売れるような

売りやすい商品というのは、

えてして、

自社にあまり利益をもたらさない

商品でもあるということに

注意すべきでしょう。

 

 

 

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