鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ベンチャーキャピタルの薦め

私が、中小企業の資金調達について、
不思議に感じていることのひとつが、
ミドルリスクの資金調達方法が少ないと
いうことです。

というのは、
現在の銀行の融資利率は、
おおむね3%以内に収まっています。

しかし、銀行からみて、
融資利率が3%以内というのは、
ほとんどが、事務コストと調達コストです。

信用コスト、すなわち、貸倒となった
たときの回収にそなえるコストは
含まれていません。

したがって、
ある程度、回収の見込みが高くないと、
この金利では融資を受けることが
できません。

このことは、ある程度、リスクの高い
事業に挑もうとする会社は、
融資を受けられないということになります。

そこで、かつて、
ミドルリスク・ミドルリターン、
すなわち、少し金利が高くても
融資を受けたいという会社向けの
融資を行おうとする銀行が2つ
登場しました。

しかし、その2つの銀行とも、
事業が行き詰ってしまいました。

私は、なぜ、ミドルリスク市場が
広がらないのかということについて、
今でも疑問を持っています。

話を変えて、
日本にも、ある程度のリスクがある
事業に挑む会社に資金提供を行う
金融機関があります。

それは、
ベンチャーキャピタル(VC)です。

VCは、改めて説明するまでも
ありませんが、事業会社に対して
資金を提供する機関としては、
銀行と同じです。

ただし、
銀行は事業会社に対して
融資によって資金提供を行いますが、
VCは事業会社の発行する
株式を引き受けることによって
資金提供を行います。

すなわち、
VCは資金の提供を行うのと同時に、
株主にもなるということです。

株式の発行によって、
資金の提供を受けると、
融資契約のように、
資金を返済しなければならない期限や
利息の支払はありません。

その一方で、
VCは株主として、
議決権を持つことになります。

そのため、
株主総会では、株主として、
社長がきちんと働いているか、
計画通りに事業を進めているかと
いったことについて、
細かくチェックをします。

株式の引き受けによって
提供を受けた資金については、
銀行融資のように
利息の支払はありませんが、
それに代わる配当を
支払うよう要求してきます。

もちろん、
配当を支払うためには、
会社が利益を出さなければ
なりませんが、
VCは、
きちんと配当を得られるよう、
利益を計上することを
要求してきます。

さらに、場合によっては、
VCの職員などを取締役に
就任させるよう要請してきます。

そして、
社長に経営者の資質がないと
判断すれば、
社長交代を要求してきます。

ここまで、
VCの特徴を書きましたが、
このようなことを書くと、
出資は受けたくないと
感じてしまうかもしれません。

しかし、そもそも、VC側も、
出資の申し込みがあった時点で、
出資の妥当性を検討し、
ある程度計画が達成される
ということが見込まれる場合に
出資をするわけですから、
出資先に対して、
無理な計画を達成することを
強要するということは
ありません。

そして、
計画の達成状況を毎月確認し、
もし、計画通りに事業が進んで
いない場合は、改善策などを
助言したり、販売先のあっせん、
幹部の派遣といった支援を
してくれることもあります。

このような面から、
事業を迅速に成長させたいと
考えている経営者の方には、
VCは強い味方になるでしょう。

もちろん、
VCから出資を受けるには、
事業構想の細部にわたって
説明する必要があり、
銀行への融資の申し込みよりも
労力が必要でしょう。

しかし、VCは、
ある程度のリスクを受入れたうえで
出資に応じてくれるし、
銀行よりも手厚い支援をしてもらう
ことができます。

もし、
「銀行は石橋を叩いても渡らない」と
いうような不満をお持ちの方は、
VCへ出資の申し込みをすることを
お薦めします。

避けなければならないことは、
「銀行への説明は面倒だ。だまって、
必要な金額を低利で貸してほしい」と
都合のよい考え方を持ち、
不満を言い続けることです。

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