このことは機会があるたびに私が述べてきており、また、理解してくださる方も多いと思うのですが、その一方で、なかなか実践されていないと感じています。すなわち、社長(というポジション)に就任したいと考える方は多いものの、社長の役割(ファンクション)を十分に果たしているかと考える方は少ないようです。
その原因は、社長の役割や、経営とはどういうことかということを理解している人が少ないからだと思います。「社長は昇格して就任するポジション」であったり、「親から引き継ぐポジション」であると認識されていることが多く、社長=ポジションというイメージを持っている方が多いでしょう。もちろん、これは間違っている考え方ではないでしょう。また、社長にはカリスマ性といった要素も必要なので、「社長にふさわしい人を選ぶ」という考え方も妥当だと思います。
しかしながら、社長はほかの誰にも代わってもらうことができない役割がたくさんあります。「社長は孤独だ」と言われたり「社長と副社長の距離は、副社長と新入社員の距離より長い」と言われたりすることでも分かると思います。すなわち、社長は重い決断をしなければならないし、最短で目的が達成できるようしっかりとした舵取りをしなければなりません。そして、その結果については、誰の責任にもできないのです。そのためか、決断を先延ばしにしたり、会社の進むべき方向を示さずに、成り行きで事業を進めている経営者の方も少なくないと感じています。
別な表現をすれば、「プロ野球の名選手が必ずしも名監督になるとは限らない」訳です。社長は「誰が会社のトップに立つべきか」という観点だけでなく、「経営者の役割を担える人か」という観点からも選任されるべきと私は考えています。