多くの研究者の方が指摘しているように、私も仕事と宗教は密接な関係にあると思います。宗教といっても、ここでは特定の宗教ではなく人の心にある宗教心を指します。その最も有名な例が、マックスウェーバーの主著「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」で、「予定説による禁欲主義が人々を勤勉にさせ、近代的な産業が発展した」という考え方でしょう。稲盛和夫さんも、臨済宗の教えから仕事にどう向かい合うかたくさんの示唆を受けていたようです。
今回、宗教について書いたのは、仕事をしているときに、何が正しくて何が誤っているのかということは、究極的には明確にできず、そのときは宗教的な考え方に依拠せざるを得ないようなことがあると考えているからです。極端なことを書くと、経営者の方は会社の経営をしている中で、ある事柄について、100人中賛成者が51人、反対者が49人のような際どい判断をしなければならないということを何度も経験すると思います。そういったときは、やはり普段から心を研ぎ澄まし、結果として間違いのない判断をするように努めていることでしょう。
名経営者と言われる人ほど、人格者と言われるようになるのは、こういったこともあるからなのでしょう。