鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

期限の利益の喪失

銀行からの融資に関する「期限の利益」とは、あらかじめ約束された返済期限になるまでは融資を返済する義務はないということです。そのため、長期間の借入になるほど、融資を受けている側の、融資を受けている側の期限の利益も大きくなるため、借入の金利も期間が長くなるほど高くなります。

ところで、一定の要件を満たすと、融資を受けている側は期限の利益を失います。これを期限の利益の喪失と言います。期限の利益を喪失すると、契約上は返済期限の到来していない分も含めてすべての融資金について直ちに返済する義務を負うことになります。

銀行からの融資については、この期限の利益を喪失する事由は、基本約定書(銀行取引約定書等)や借用証書(金銭消費貸借契約書等)に記載されており、当然喪失と請求喪失の2つの種類があります。当然喪失とは、支払の停止(いわゆる倒産など、支払能力がなくなったときなど)になったとき、6か月間に2回の不渡りを出し、手形交換所で取引停止処分になったとき、いわゆる夜逃げをしたときなどに、そのことによって期限の利益を失うことです。

一方、請求喪失は、返済が延滞したとき、融資契約に違反したとき、債権保全を必要とする相当の事由が生じたときなどに、銀行が融資を受けている側に催告書を発送し、その内容によって状況が改善されなければ(延滞しているときは延滞が解消しないときなど)、期限の利益を喪失します。なお、「債権保全を必要とする相当の事由」とは、表現が曖昧であり、銀行側に有利に感じられますが、銀行もむやみに期限の利益を喪失させることはあまりありません。ただ、会社の赤字の状況が継続していたり、債務超過の状況が継続している場合は、この「債権保全を必要とする相当の事由」に該当すると言えます。

融資を受けている側でわかりにくいのは、請求喪失が行われる状態にあるときです。前述のように、融資の返済が延滞していたり、赤字が恒常化している場合、銀行は契約に従って期限の利益を喪失させることができます。期限の利益を失った会社に対しては、銀行は、預金と融資金の相殺、担保の処分、保証人からの代位弁済、法的手続きによる回収などを行うことになります。

これも、前述のように、銀行はむやみに期限の利益の喪失を行う訳ではありませんが、融資金の返済を延滞していたり赤字の状態が続いている場合は、銀行の意向次第で期限の利益を失います。しかし、銀行の融資を延滞していたり赤字が続いている会社の経営者の方の中には、そのような契約になっていることを知らない方も多いようです。銀行も、融資先の成長のために融資を行っているわけですから、それが達成されない状況(赤字の計上)や約束違反(延滞)は厳に避けなければなりません。

 

 

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