私が受ける起業のときの融資の相談の中で、融資の金額が大きすぎると感じるものが少なくありません。「金額が大きい」というのは、絶対的な金額ではなく、その事業を鑑みて妥当かどうかという相対的な金額から勘案する金額です。例えば、設備は賃貸やリースでなくなぜ融資を受けて購入するのか、出店場所はなぜ駅前の一等地なのか、なぜ創業時からそれだけ大きな機械が必要なのか、という疑問があるものがあります。
もちろん、創業しようとする方にはそれなりの考え方があるわけですが、それを実現する方法は融資しかないのか、それが成功する客観的な根拠があるのかという点に欠けるのです。最初から、多くの製品を生産したり、一等地に出店しようとするならば、テストマーケティングなどを行い、需要が確実であることを示していれば強い根拠となりますが、それなしには創業時に大きく事業展開を行うことはリスクが高く、融資の承認も得られにくいでしょう。
銀行側も、決して及び腰ではなく、創業してみたら予想より需要があり、結果的にもっと生産能力を大きくしておけばよかったという例は知っていますので、なんでも申し出よりも小さくすればよいと考えているわけではありませんが、予想が上振れするという例は少数であり、創業時の計画は客観性がなければ最低限の設備とすることが妥当でしょう。
また、借入申込額が多額となる原因には、準備期間が短いというものもあります。大きな事業を行いたいのであれば、それなりの準備期間を置き、2割~3割の自己資金を用意する必要があります。自己資金が多ければ、融資をする側もリスクが少ないと判断しますが、それだけでなく、創業しようとする経営者はきちんと時間をかけて計画的に創業しようとしているという姿勢も評価します。
このように、緻密な計画や十分な自己資金などにより、創業の際の壁のひとつである創業融資の承認は得やすくなります。これを言いかえれば、準備が不十分であればあるほど、創業時の融資を難しくすることになります。