鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ブログを続けると『宝くじ』に当たる

[要旨]

経営コンサルタントの板坂裕治郎さんによれば、就職希望者に社長の考えや想いを伝えられるよう、社長がブログによる情報発信をするとよいということです。そすることで、ブログを読んだ就職希望者が、「ここで働きたい!」と、求人に応募してくるようになるということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのご著書、「2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、板坂さんによれば、業績を高めるためには、昇格基準、減額基準を、部下の方たちにも参加してもらい作成すると効果があり、その理由は、部下の方たちが、自ら作った基準を目標に動き出すので、納得しやすいからということについて説明しました。これに引き続き、板坂さんは、自社によい人材を集めたいといときは、社長がブログなどで情報発信するとよいということについて述べておられます。

「中小零細弱小家業が人を集めるには、(求人広告を出す方法とは)別の戦略が必要になる。理想形は、こちらの考えや想いをちゃんと理解し、そこに共感して、『ここで働きたい!』と思ってくれた人が面接にきてくれる形、これを実現するには、社長さんが自ら情報発信していくしかない。いい人材を入れたいのなら、あなた自身が『想いを発信するいい社長さん』になっておく必要があるのだ。幸い、今の時代は、どんなに無名の社長さんでも、ブログやツイッターなどで地道にコツコツ情報を発信できるようになった。

実際に私が教えるNJE理論(毎日のブログ更新を基本にしたアホ社長再生プログラム)を実践して、毎日、ブログを書いている社長さんのところには、ブログを読んで『私、ここで働きたいんです!』と、求人もしていないのに『面接希望者がきた!』なんていう話がいくつもある。そういう面接希望者の人たちは、社長さんの発信した思いに共感してファンになっているので、条件面が少々悪くても『ここで働きたい』と飛び込んできてくれる。

中には、『給料のいい大きな会社に入ったものの、社長の想いが見えず、馬車馬のように働かされ、自分が歯車になっていることに嫌気が差した』という人が、『次は自分の仕事に誇りが持てるような会社で働きたい』と、面接にきたケースもある。そう思って転職を考え始めた人たちをゲットできれば、中小零細弱小家業にとっては宝くじに当たったようなもの。そして、そんな転職を考え始めている人の行動パターンを考えても、社長さんの情報発信は重要だ」(201ページ)

以前、福井県トラストという足場工事業の会社が、社長がブログを書くことによって、直接、大手ゼネコンから受注ができるようになったということを述べましたが、そのような効果は、人材募集でも得られるということです。就職先を探している学生の立場に立てば、会社のホームページなどで会社のことが書かれていたとしても、それは「お見合い写真」のプロフィールのようなものとしてしか感じることができないのではないかと思います。

でも、社長がブログを書き、いま、社長が考えていることを直接記事にすれば、実際に社長に会わなくても、社長の考え方を理解できます。もちろん、すべての就職希望者が、社長と考えが合うとは限りませんが、社長に共感する人は関心を示してくれる確率は高くなります。さらに、板坂さんが述べておられるように、「この会社であれば自分の仕事に誇りが持てる」と感じる方がいれば、大企業と比較して条件が悪くても働いてみたいと感じる方も応募してくれるようになるでしょう。

こう考えると、ブログは、自社のスカウトになってくれる社長の分身と言えるかもしれません。そのように考えれば、社長がブログを書き続けることの意義を強く理解できると思います。もちろん、ブログを書き続けることができる社長の割合は少ないということは、以前にもお伝えしましたが、ブログを書き続けることで「宝くじに当たる」(優秀な就職希望者が入社してくれる)と考えれば、ブログを書く意欲を高めることができるのではないかと思います。

2024/6/3 No.2728

 

社員全員参加で『昇給基準』を定める

[要旨]

経営コンサルタントの板坂裕治郎さんによれば、業績を高めるためには、昇格基準、減額基準は、部下の方たちにも参加してもらい作成するとよいそうです。なぜなら、部下の方たちが、自ら作った基準を目標に動き出すので、納得しやすいからだそうです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのご著書、「2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、板坂さんによれば、部下の方たちの気持ちをまとめるには、社長に対する不満や要望を聞く機会をつくる方法があり、これによって、部下の方たちの当事者意識を高めることができ、自発的に活動するようになるということを説明しました。

これに続いて、板坂さんは、給料の基準について、従業員に決めてもらうことをお薦めしておられます。「(本書の別の章で板坂さんは)社員に参加してもらいながら経営理念を固めていく方法を紹介したが、給料でも同じことをやっていく。どんな場合に社員の給料を上げるのか、社員全員参加のミーティングを開き、売上額はもちろん、お客さんからの評価、経営理念に沿った目標など、業種業態に合わせた『昇給基準』『減給基準』を作っていく。

これをやると社員一人ひとりが、自ら作った基準を目標に動き出すので、納得しやすい。経営状態も改善する。私のクライアント先のある企業では、社員全員で『昇給基準』『減給基準』を定めたことで、赤字経営が一転して黒字化。1億円ほどあった借金が半分になったケースもある。美容業という社員一人ひとりのモチベーションがそのまま売上に直結する業種だったとはいえ、個々の社員に『自分も会社の経営に参画している』という意識が広がり、売上目標の意味が変わった。それまでの売上目標はトップダウンで押し付けられた数字であり、達成したことでボーナスが増えるのは『ご褒美として当たり前』だった。

それが、自分たちで『昇給基準』を作り、売上目標とリンクしたことで、“達成したい数字”になっていった。数字だけを見ると変わらないが、背景にある意味、解釈の変化が経営に与える影響はバカにならない。達成したことが成功体験になり、『自分はできる』『もっとできる』と思えるようになる。そうやって作った数字に対する評価や感謝として、給料やボーナスが増えていく。このサイクルができあがると、社員たちは何か仕事に迷ったときに『昇給基準』『減給基準』と、それにリンクした経営理念を見て、『そうだった』と納得して歩んでいくことができるのだ」(192ページ)

従業員の給料については、多くの中小企業経営者の方が悩んでいるようです。従業員の方のがんばりに報いて昇給してあげたいが、いったん、昇給してしまうと、業績が苦しくなったときに下げることができないので、昇給の決断がなかなかできないというものです。そこで、板坂さんがご提案しておられるように、従業員の方も参加して昇給基準や減給基準を作るという方法は、その解決策のひとつだと思います。

ただ、私は、従業員の方が参加せず、社長や幹部だけで作った昇給基準を公表するだけでも効果があると思います。なぜなら、現在の給与額に不満があるとしても、どうすれば昇給するかが明確になり、それに従って仕事に励むことができるようになるからです。要は、昇給基準によって、会社が従業員の方に求める活動が、従業員の方に伝わるわけです。さらに、会社のKGI、部門ごとのKPI、個人ごのとKPIを設定し、それに給与の一定割合を紐付けすると、やるべき活動がより明確になります。

ただし、昇給基準を明確にするという作業は、実際には労力が必要です。また、1度作成すればそれですむとは限らず、適宜、状況に応じて変更しなければなりません。このような理由から、多くの中小企業では昇給基準が明確にされていないようです。しかし、板坂さんがご指摘しておられるように、昇格基準を明確にすることは、組織力を高め、業績の向上につながります。そして、経営環境の複雑な時代だからこそ、組織力を高めるために、経営者の方は労力そ注ぐ必要があると、私は考えています。

2024/6/2 No.2727

 

社長を吊し上げる会議で部下をまとめる

[要旨]

経営コンサルタントの板坂裕治郎さんによれば、部下の方たちの気持ちをまとめるには、社長に対する不満や要望を聞く機会をつくるとよいそうです。そうすることで、部下の方たちの当事者意識を高めることができ、自発的に活動するようになるそうです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのご著書、「2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、板坂さんによれば、厳しい経営環境にあっても事業を継続している会社は、社長の想いを社員に伝えたうえで、一緒に理念を考えてもらった理念があり、そのことによって、社員たちは理念に共感し、能動的な活動ができるようになるということを説明しました。

これに続いて、板坂さんは、社長は部下の不満を受け止めることが大切だということについて述べておられます。「社員の気持ちをまとめるには、遠い先の目標を掲げることも大切だが、荒治療が効くこともある。目先に見える目標を作り、それを阻む共通の敵を設定することで、全員の目線が揃い、一体感が増していくのだ。中小零細弱小家業の社長さんに対して、私は本気の無礼講の場を勧めている。社員旅行の夜や、忘年会の、『今日は無礼講で言い合おう』ではなく、真っ昼間、お酒も入れず、社員が社長さんを“共通の敵”として扱うミーティングの場を設けるのだ。

とはいえ、社員も社長さんも、なかなか口火を切りにくい。そこで、私のようなコンサルタントが入り、場をセッティングする。『今日は社長の悪口をいくら言ってもええ。私も社長と長時間、いろんな話をしてきたけど、正直、つまらんわ』と切り出して、『こんな社長を吊るし上げる会議、この先やるかやらんか言うたら、多分、やらん。今日しかないと思うけ、みんな思っていることを吐き出してみて』と、口火を切る。すると、口の重かった社員たちも、日頃の不満、要望、伝えたかったことを、バンバン話し始める。

社長さんにしてみれば、味方のはずの社員から吊し上げにされる、きつい時間の始まりだ。日頃、『僕はそんなに社員には嫌われていないと思います』と言っている社長さんほど、受けるダメージはでかい。しかし、社長さんを仮想敵にしたミーティングを終えると、社員はみんなスッキリした顔になる。そこで、『あんたらが責めに責めた社長をアホ社長のまま放っとくんか?』、『どうするんや?』と投げかけると、そこから会社を変えるための前向きなミーティングへと変わっていく。体育会系のノリが苦手な人も、いざやってみると、雨降って地固まることを実感してくれる」(185ページ)

私は、組織を変えるためには、必ずしも、「社長を吊し上げる会議」を開く必要はないと考えています。必要なことは、部下の方たちが、自分の意見も事業活動に反映されるということを実感し、当事者意識を高めてもらうことです。その方法の一つは、「社長をつるし上げる会議」だと思いますが、それ以外にも、QCサークルや5S活動も、時間はかかるかもしれないですが、部下の方たちの当事者意識を高める方法だと思います。

そして、もうひとつのポイントは、部下の方たちの当事者意識が高くなったとき、社長はそれを受け止めなくてはならないということです。これを言い換えると、社長は口出しできることが減ってしまうということです。もし、社長自身が「エースで4番」でいたいという気持ちを持っていると、その状況に耐えることは、あまり簡単なことではないようです。しかし、そこで「黒子」役でに徹することができるかどうかが、経営者の資質を高めることができるかどうかの分岐点なのだと思います。

2024/6/1 No.2726

 

『理念』は社員と一緒に考えてもらう

[要旨]

経営コンサルタントの板坂裕治郎さんによれば、厳しい経営環境にあっても事業を継続している会社は、社長の想いを社員に伝えたうえで、一緒に理念を考えてもらった理念があるということです。そうすることで、社員たちは理念に共感し、能動的な活動ができるようになるからということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのご著書、「2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、板坂さんによれば、会社が「全員野球」の事業活動ができるようになるには、社長は「監督」に徹する、すなわち、社長は目標などのゴールを示すだけで、事業現場から身を引いて、現場の部下に判断や活動を委ねるようにしなければ、組織的な活動ができるようにならないということを説明しました。

これに続いて、板坂さんは、厳しい経営環境の下で、事業を継続させていく会社は、従業員の方にいっしょに考えてもらった経営理念を共有しているということについて述べておられます。「厳しい環境下でも残っていく会社に共通しているのは、社長さんの使命と将来に向けた明確なビジョンがあること。そして、『使命』という出発点と『ビジョン』という到達点を結ぶ、『熱い想い=理念』があることだ。私の場合、20代、30代の頃は、自分の儲けのことしか頭になかった。だが、40歳になるまでに、何人もの友達や後輩が、借金を理由に自ら命を絶った。

私は、『もう二度と金で命を落とすヤツの葬式には出たくない』と、強く思った。それが自らの使命となって、今の仕事を始めた。世の中の8割を占める、中小零細弱小家業の、ほとんど勉強もせず、自分のカンと勢いだけで経営しているアホ社長たちを再生させること。それが理念になり、日本全体の底上げにもつながるというビジョンになった。そして、自分自身の熱い想いを見える化した理念を開けっぴろげに公開し、フル回転で走らせている。しかし、私の言う『理念』は、社長1人で作っても、なんの意味もない。社長の想いを社員に聞いてもらい、一緒に考えてもらうことが重要だ。

この会社が、世の中に向けて発信するメッセージとして、理念を文章化していくこと。これができて初めて、会社を動かす乗り物としての理念になっていく。出発点は、社長が自身の命を使ってでも成し遂げたい使命であっても、それを文章化して、共有していかなければ、誰も共感してくれない。中小零細弱小家業を船にたとえるなら、社長さん1人が漕いでいるうちはいいが、そこに『社員』という名の乗組員が乗船してきたら、事情が変わる。『なんで、この船を漕いでいるのか』、『この船は、将来的にどこに向かおうとしているのか』ということを一緒に考え、共有し、共感してもらわなければ、順調な航海をすることはできないのだ」(174ページ)

組織の3要素は、共通目的、貢献意欲、コミュニケーションということはよく知られていますが、意外と、共通目的は意識されていないように、私は感じています。冷静に考えれば、組織は、構成員が共通の目的を達成するためにつくられるわけですが、業績が悪い会社は、何のために仕事をしているのかが明確でなく、そのことが原因で、従業員たちは能動的な活動ができず、効率的な活動ができないのだと思います。

板坂さんは、「社長の想いを社員に聞いてもらい、一緒に考えてもらうことが重要だ」と述べておられますが、これは、共通目的を明確にする活動だと思います。そして、共通目的である「理念」が明確であれば、後から会社に加わってきた従業員たちも、自分が何をすればよいのかを理解しやすいので、直ちに効率的な活動が可能になるのだと思います。しかし、この従業員と共有できる「理念」を明確にすることも、意外と難しい面もあると、私は考えています。

なぜなら、経営者の方が起業する要因は、「世の中の役に立ちたい」という漠然とした想いはあるものの、「自分がやってみたい事業をやりたい」とか、「お金儲けがしたい」というような、自分中心の考え方をしていることが少なくないからです。そのことが直接的に問題ではないのですが、組織的活動は、社長個人の想いを実現するものではないわけですから、板坂さんのように、起業当初は自分のやってみたいことをやることが目的であったとしても、その後、自分の適性をどう活かせるかを考え、従業員の方たちと共有できる理念を作ることは重要だと思います。

2024/5/31 No.2725

 

『全員野球』は社長が監督に徹すること

[要旨]

経営コンサルタントの板坂裕治郎さんによれば、会社が「全員野球」の事業活動ができるようになるには、社長は「監督」に徹しなければならないそうです。すなわち、目標などのゴールを示し、後は、事業現場から身を引いて、現場の部下に判断や活動を委ねるようにしなければ、組織的な活動ができるようにならないということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのご著書、「2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、板坂さんによれば、中小企業の経営者の多くは、野球に例えると、エースで4番、すなわち、1人でチームを引っ張るタイプだそうですが、そのような状態では、ある程度は業績は高められるものの、全員野球、すなわち、メンバーのそれぞれの個性を活かして事業活動に臨んでいる会社には勝てず、自社の業績は頭打ちになるということについて説明しました。

これに続いて、板坂さんは、会社が「全員野球」の経営を実現するためには、社長さんが「監督」に徹しなければならないということを述べておられます。「全員野球の経営を実現するためには、社長さんが、さまざまな人材の特徴を理解し、それを認め、適材適所に配置していく必要がある。だが、そうやって全員野球の基盤ができてきて、スタッフの数が10人、20人となって、店や拠点、部署が2つ、3つになってくると、次の問題が生じる。それは、“プチエースで4番”の誕生だ。(中略)

プチエースで4番は、ミニ社長さんでもある。現場で力を発揮し、店や拠点もうまくいく。最初のうちは、『全員野球成功か…』と安心するわけだ。ところが、こいつが徐々に発信力を持ち始め、『社長!現場はこうなんです』と意見するようになってくる。(中略)そこで、社長さんが、『いやいや、まあまあ』と弱気になると、ほかのスタッフはその対応をきちっと見ている。まわりは、『あの人が言い出したら、社長は絶対ノーと言わんけ』と白けムードが広がり、本人は増長していく。

そうやって小さな組織は崩壊していくのだ。(中略)ある飲食店のケースでは、料理長が増長し、店全体が彼の思うままになっていた。社長さんが少しでも何か言おうものなら、『給料が安いけ、ほかから引き抜きもあって』と脅してくる。常連客は味に惹かれていると、社長さんもほかのスタッフも信じ込んでいるから、料理長の給料は、ばーっと上がる。こんなマネジメントでは、遠からず、店はうまくいかなくなる。1人に自分のやり方を伝えるような手法では、全員野球はうまくいかない。

自分のカラーを受け継いだスタッフに店を任せると、一時的に安心感が高まり、以前からのお客さんの受けもよくなるが、長期的に見ると、トラブルの素になる。全員野球のマネジメントを成功させるには、社長さんが監督に徹することだ。勇気のいることだが、現場から一歩退く。各スタッフとの接し方も、評価の基準も、横一線で、現場を完全に委ねてしまうことだ。小さいことにまで口を挟まず、目指すゴール地点のフラグだけを立ててやり、後はじっくりと見守る。これが、中小零細弱小家業の経営者に必要なマネジメントだ」(165ページ)

今回のテーマは、やや難易度が高いことだと、私も考えています。やはり、起業して、ある程度まで事業を軌道に乗せた経営者は、自分のやり方が正しいので、自分のやり方を部下たちに伝えて踏襲してもらおうと考えます。これは、ある程度までは正しいやり方だと思います。しかし、経営者と部下は、人格が異なるので、部下は経営者とまったく同じことをできません。

ある程度までは倣うことはできても、それには限界があります。そこで、経営者の方は、自分の分身を作ろうとするよりも、リーダーとしてのノウハウを経営者から学び取らせ、自分の個性を活かしたリーダーになることを目指してもらうことの方が、大きな成果をえることにつながると思います。そこで、板坂さんは、「社長さんは監督に徹することだ」と述べておられるのだと思います。

そして、もう一つ、社長が監督に徹することについて難しいと感じることは、経営者としては割に合わないと感じることだと思います。事業活動の権限は部下に委ね、部下が自分の判断で事業を行い、その結果、手柄を得たら、それは部下のもの。でも、もし、部下が失敗したら、責任は経営者が負わなければならない。黙って見ているだけなのに、これでは何のために社長になったのかと感じてしまうことでしょう。これについては、私もまったくその通りだと感じます。経営者の方は割に合いません。

でも、ちょっと残念ですが、経営者というものはそういう損な役回りのようです。本当は、花形選手のように活躍して、多くの人から称賛を浴びたいと考えるのが人情なのですが、全員野球、すなわち、組織的な活動ができる組織をつくるには、しばらくは社長は損な役回りに徹することになるようです。これは、理屈では説明できないことなのですが、これを受け入れることができるかどうかが、社長の器量なのではないかと思います。

2024/5/30 No.2724

 

『エースで4番』より『全員野球』を

[要旨]

経営コンサルタントの板坂裕治郎さんによれば、中小企業の経営者の多くは、野球に例えると、エースで4番、すなわち、1人でチームを引っ張るタイプだそうです。そのような状態では、ある程度は業績は高められるものの、全員野球、すなわち、メンバーのそれぞれの個性を活かして事業活動に臨んでいる会社には勝てず、自社の業績は頭打ちになるということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのご著書、「2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、板坂さんによれば、中小企業経営者の方の多くは会計が苦手であるにもかかわらず、見栄でわかったふりをしており、さらに、会計情報は売上しか見ていないので、業績が悪化したときも、売上を増やすこと以外の対策を判断できない結果、妥当な利益率を確保するなどの、より適切な判断ができなくなってしまうということについて説明しました。

これに続いて、板坂さんは、事業を発展させていくためには、「全員野球」のような組織づくりが大切ということについて述べておられます。「中小零細弱小家業の社長さんというのは、高校野球にたとえるなら、地区予選を2つか3つ勝ち上がるチームのエースで4番。投げて、売って、チームを引っ張るキャプテンだ。9回まで相手チームを『0』で抑えて、社長さんがホームランを1本打てば、試合には勝てる。

でも、甲子園に出る業豪チームは、1番バッターが内野安打で出塁して、盗塁し、2番がバンドで3塁に送って、3番がフォアボールを選び、ランナーが溜まったところで4番がタイムリーを放つ。そして、続く5番が犠牲フライで追加点……、と。スタメンからベンチメンバーまで、出場する選手全員が役割を全うしていく。こういう野球をされると、対戦相手には、ボディーブローのようにダメージが蓄積する。だから、伝統のある強豪校は、接戦になっても、最終的に勝ち上がることができるのだ。経営も同じこと。社長がエースで4番の会社は、ある程度成功したところで、必ず壁にぶち当たる。

それは、社長さんが現場で陣頭指揮を執らないと、お客さんが集まらないからだ。しかし、社長さんは1人しかいない。店を2店舗、3店舗と増やしていけば、当然、1つの店に張り付いているわけにはいかない。社員が5人、10人、15人と増えていけば、マンツーマンで1人ひとりを育てながら、自分の『イズム』を浸透させていくこともできなくなる。どこかで選手全員が役割を全うする全員野球ができるようにならなければ、会社は社長さんの器以上にはならず、経営は頭打ちになっていく」(159ページ)

チームは、それぞれ個性の異なるメンバーによって構成されているので、各メンバーがそれぞれの個性を発揮して得られた成果は大きくなるということは、容易に理解できると思います。一方、エースで4番のキャプテンが1人でチームを引っ張る場合、成果はキャプテン1人分の成果とほぼ同じであり、チームとして活動する意味が薄いということになります。とはいえ、このことは誰にでも理解できることでありながら、「エースで4番」の社長が少なくないのは、主に、2つの理由が考えられます。

1つ目は、社長が起業した目的が、社長自身がエースで4番になることであるからというものです。もちろん、自らのリスクで起業する以上、自分の思う通りの事業をしたいと思うことは当然であり、このことが直ちに問題とは言えないでしょう。当面の間、社長ひとりか、または、少人数で事業を進めるのであれば、社長がエースで4番でも問題ないと私は考えています。

そして、2つ目の理由は、社長のマネジメントスキルが十分ではないということが考えられます。事業を拡大するとすれば、社長がエースで4番のままでは限界があるということは理解できるものの、「全員野球」に方針を変えようとしても、そのための経営者としてのスキルが少ないと、直ちに全員野球を実践できるようにすることは難しいでしょう。

そこで、少なくとも、経営者は、自ら「マウンド」や「バッターボックス」に立つことが本当の役割ではなく、「ベンチ」から選手の個性に合った役割を見出し、それを実践するよう指示を出すことが本当の役割であると認識することが必要だと思います。それができるようになれば、次は「選手」たちの個性を伸ばすための働きかけをしていくことで、より大きな成果を出すことができる「全員野球」を実践できるようになるし、それが21世紀らしい経営者のスタイルであると、私は考えています。

2024/5/29 No.2723

 

足し算と掛け算ではなく引き算と割り算

[要旨]

経営コンサルタントの板坂裕治郎さんによれば、中小企業経営者の方の多くは会計が苦手であるにもかかわらず、見栄でわかったふりをしており、さらに、会計情報は売上しか見ていないので、業績が悪化したときも、売上を増やすこと以外の対策を判断できない結果、妥当な利益率を確保するなどの、より適切な判断ができなくなってしまうということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのご著書、「2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、板坂さんが、犬のトリマーの方からご相談を受けたとき、トイプードル専門店とすることをお薦めしたそうですが、それは、トイプードルのトリミングは、トリマーの腕が発揮されるからであり、見込み客への訴求効果が高いからだということについて説明しました。

これに続いて、板坂さんは、中小企業経営者は、財務分析に基づいて経営判断をできるようにしなければならないということについて述べておられます。「正直に言って、決算書の見方を知らない社長さんはごまんといる。どうしたらお客さんが振り向いてくれるのか。この商品はどうやったら売れるのか。どこに営業をかけたら効果的か。中小零細弱小家業の社長さんは、基本的にこういう攻めの思考は得意としている。新しい策を練るのも大好きじゃ。月の売上と年商を聞かれても、ピシッと答えられる。ところが、守りについては疎かで、苦手にしている。

原価率は?固定費はどれくらい?人件費は?借入返済は?労働分倍率は?こんな質問になってくると、答えが鈍くなってくる。売上のように積み上がっていく数字には興味があるけれど、支払いのようなどんどんと出ていく数字には、あまり興味がない。しかし、見栄っ張りだから、数字のややこしい話になると、『お金のことは税理士に任しとるけ』と、逃げを打つ。そのくせ、決算時期になると税理士が持ってきた試算表をちらっと見て、『おお、わかった、そんで、税金はどれくらい払うたらええん?』と言ってしまう。まったく読み方がわからないのに、『わからん』と言ったらかっこ悪いから、さもわかったような態度でごまかして切り抜けた気になるわけだ。(中略)

しかし、そのままで走っていると、イケイケドンドンの成功サイクルに陰りが見えたとき、現時点で自分の会社にいくらお金があって、どれくらい儲かっているのかすらわからない状態になる。こんなことではいけないとわかっていながら、決算書の貸借対照表損益計算書といった言葉に出くわすと、ギブアップしてします。『仮にも社長さんが……』と思うかもしれないが、中小零細弱小家業の社長さんの7割は、決算書を読めないまま、売上の数字だけに注目して突っ走っている。今月の売上はいくら、年間の売上はこれくらい、と。

だが、粗利が何%で、営業利益がいくら、キャッシュフローがどうなっているかといった数字はあやふやだ。つまり、足し算、掛け算は得意だが、引き算、割り算が入ってくると目を背けてしまう。結果、一度、会社の経営が下降線に入ってしまうと、いくらがんばってもラクにならない。それは目に入っている数字が売上だけだからだ。社長さんは、『売上が足りないからだ』と考えて、売上を増やすために奔走する。すべての時間をそこに費やす。だが、売上が増えても状況は変わらない。なぜなら、まず、やるべきなのは、利益が出る値付けをし、必要経費を削減することだから」(155ページ)

板坂さんが、業績が悪化している会社が、「まず、やるべきなのは、利益が出る値付けをし、必要経費を削減すること」というご指摘は、私にもたくさん心当たりがあります。というのは、会計が苦手な経営者の方が、業績を改善しようとするときは、売上を増やせばよいという発想になってしまっているからです。しかし、社長が自社の稼ぎ頭と考えていた商品は、実際は、採算がとれておらず、売れば売るほど赤字が拡大するということは珍しくありません。

というのは、経営者の方が業績がよいと感じるのは、商品が売れているかどうかというものの流れで判断してしまいがちで、それが実際に会社の利益にどれくらい貢献しているかまで確認していないことが多いからです。では、このような状況については、経営者の方はどうすればよいのかというと、食わず嫌いをせず、会計について学び、日商簿記2級、または、3級を取得することだと思います。簿記を学んだ経営者の方の事例として、私は、サンリオピューロランドを運営する、サンリオエンターテイメントの社長の小巻亜矢さんを思い浮かべます。

小巻さんは会計が専門分野ではありませんでしたが、当初、幹部として経営会議に出席したとき、提出された財務資料がまったく頭に入らなかったそうです。そこで、通信教育で簿記を学んだ結果、数字に関心が持てるようになり、今まで見えなかったものが見えるにようになったので、会計の知識を身に着けたことは、まるで眼鏡をかけたようなものとお話しておられます。今回の記事の内容は、単に、経営者は会計の知識を身に着けるべきと受け止められてしまいがちですが、そのことよりも、会計の知識がなければ、経営者の方の判断は限定されてしまうということを、板坂さんはお伝えしようとしているのだと思います。

2024/5/28 No.2722