鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

たまごっちは製品自体を育てている

[要旨]

新製品開発には比較的多額の投資が必要ですが、多くの投資を必要としない、既存製品の製品寿命を延ばす手法は、先行きの見えにくい時代に適しているものと考えられます。そこで、製品をどう改良するか、顧客へのリサーチが、より大切になっています。


[本文]

ダイヤモンドオンラインに、たまごっちに関する記事がありました。たまごっちは、1996年に発売されて、25年経ちました。その25年間には、発売直後の1度目のブームの後、2004年に2度目のブームが起き、そして、2020年に3度目のブームが起きたそうです。

このような長寿製品をどうとらえるかということですが、たまごっちについては、マーケットインに徹しているということだと思います。話がそれますが、だからといって、マーケットインの対義語である、プロダクトアウトが、必ずしも劣っているというわけではないので、ご関心のある方は、プロダクトアウトについても調べてみることをお薦めします。

話をもどすと、長寿製品は、すでに世に出ている製品であるので、認知度が相対的に高く、少し改良すれば、一定の売上が得られるという面で優れています。このたまごっちを含めた長寿製品は、プロダクトライフサイクルを伸ばすために、少しずつ改良しているという点で共通していると思います。新製品の投入など、大きな投資が難しいという時代は、少し改良を加えるという、製品寿命を延ばす手法が適していると思います。

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大手小売業への政府による資本支援

[要旨]

田村大臣が、大規模な小売業に対しては、資本支援を検討していると言及しましたが、もっと、迅速、かつ、円滑に利用しやすい政策を打ち出さなければ、事業に行き詰る会社が現れ、中小企業にも悪影響が及ぶことが懸念されます。


[本文]

25日に、テレビの報道番組に出演した田村厚生労働大臣が、大規模な小売業に対する、資本支援について言及しました。具体的には、緊急事態宣言にしたがって、都内の百貨店が休業したにもかかわらず、協力金が1店舗1日あたり20万円では少ないのではないかとの質問に、次のように答えています。

「資本支援をしていくしかないのだろうと思う(中略)、事実上、返済期間を長くすることによって、資本注入に近いような方法が考えられる」都内の大手小売業は、政府の要請に基づいて休業するわけですから、それにともなう支援を受けることは当然であり、田村大臣の考えは妥当でしょう。

ちなみに、居酒屋チェーン店を営むワタミも、日本政策投資銀行から100億円程度の劣後ローンの支援を受ける方向で調整しているとの報道がありました。政府が、新型コロナウイルス感染拡大防止の対策をとることは当然ですが、その一方で、政府の要請に応じて休業する会社に対する支援は、後手後手になっていると感じています。

ワタミが受けるような劣後ローンの支援についても、もっと、円滑、かつ、迅速に受けられるような対応がとられなければ、事業継続に行き詰まる大手の会社が、多数、現れてしまい、中小企業へも影響が波及してしまうでしょう。官僚の方たちも懸命に対応しておられることは理解しますが、政策にちぐはぐさを感じられる点は、忙しいからではなく、マネジメントが欠けているからと思います。この点については、閣僚の方たちの、より強力なリーダーシップの発揮を期待しています。

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株主の代わりに銀行に意見をきく

[要旨]

オーナー会社は、経営方針の一貫性があるという面で優れていますが、その一方で、経営者が独善的になってしまうという危険性もあります。そこで、適宜、銀行に自社を評価してもらうなど、独善的にならないような対策をとることが大切です。


[本文]

先日、大手家電メーカーのT社の社長のK氏が、社長を辞任しました。(ご参考→ https://bit.ly/3xmSHY9 )表向きは再上場という目的が達成されたということが理由のようですが、わずか1年で辞任した背景には、T社に対して買収提案をしてきた投資ファンドとK氏の関係が不透明という批判が、他の経営者から出ていたからのようです。こういう面から見ると、大きな会社の社長は、その座に居続けるということは、容易なことではないということを実感します。(実際に、T社の社長を解任させるためには、本当は、複雑な手続きが必要なのですが、ここではその説明は割愛します)

いっぽう、一般的な中小企業のオーナー会社では、「業績悪化」、「実行した戦略の失敗」といった理由で、社長が交代するということは、まず、ありません。なぜなら、社長(≒取締役)を解任できるのは株主ですが、オーナー会社では、社長=株主なので、社長以外には、社長を解任する人はいません。

とはいえ、社長が社長を辞めたいと思ったとしても、交代してくれる人がいないという事情もあるという面もあります。こういった面からは、オーナー会社の多くは、実態は、「個人商店」の状態であるといえるでしょう。だからといって、私は、オーナー会社であることや、個人商店であることが、決して問題であるとは考えていません。大きな会社であっても、社長が数年で交代するような場合、10年以上、同じ人が社長を務める中小企業と比較して、一貫性の面で劣ることがあると私は考えています。

例えば、「年輪経営」で有名な、伊那食品工業の塚越寛さんは、1958年から社長代行を、1983年から社長をお務めになり、2003年に会長になるまで、長年にわたって同社のトップとして、バブルに踊らされることなく、一貫した方針を貫いてこられました。しかし、やはり、オーナー会社の社長は、独善的になってしまうということは避けられないということも事実だと思います。業績が悪くなり、いわゆる「ゾンビ会社」の状態になっても、社長が変わらないでいることが多いというのは、その一例でしょう。

したがって、オーナー会社の社長は、自分に諫言してくれる人を見つけておくことが大切だと思います。では、具体的にどうすればよいのかというと、私は、銀行に株主の代わりに意見を述べてもらうことだと思います。確かに、銀行が必ずしも正しい意見を述べるとは限りませんので「銀行の意見を聞かせて欲しい」とは言わずに、「弊社の財務状況を、貴行はどう分析しますか」ときくとよいと思います。

財務状況は、自社の顧客の、自社に対する評価であり、銀行にそれを分析してもらえば、それは、決して銀行だけの意見ということではなくなるでしょう。確かに、自社の評価を、銀行などの部外者にきくことは、経営者としてはつらいことだと思いますが、いろいろな意見を聞くことが、自社の発展につながると考えることで、それだけの価値は十分に得られると思います。ちなみに、銀行は、そのような姿勢をとる会社に対しては、融資相手として評価を得られることにもなるでしょう。

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貸倒が発生した時の銀行への対処法

[要旨]

自社の債権に貸し倒れが発生したとき、それは、銀行取引に悪い影響を与えます。しかし、それを隠そうとすることは、かえって、銀行からの不信感を高めることになりますので、積極的な情報開示を行うことが大切です。


[本文]

経営コンサルタントの小山昇さんのラジオ番組に、ゲストとしてご出演されておられた、アースコム社長の丸林信宏さんのお話を聴きました。丸林さんによれば、同社は、一時期、資金繰が苦しい状態にあったものの、銀行との話し合いを行った結果、支援をしてもらえるようになったということです。

その内容については、詳細な部分まではお話しておられませんでしたが、数億円の金銭債権(前渡金)の回収不能分について、貸倒損失として処理をすることにし、それに際して、顧問税理士とともに、銀行に説明してから実行したようです。この内容は、やや漠然としていますが、一般的に、数億円の貸倒処理を行う会社は、銀行から警戒されます。しかし、同社は、事前にそれを行いたいという意向を銀行に伝え、銀行の理解を得た上で行ったことから、銀行からの信頼を得たのだと思われます。

融資相手の会社に、数億円の貸倒があるということは、銀行も、事前に気づくものです。しかし、それについて、どう対処するのかということは、銀行から融資相手の会社に対しては、ききにくいものです。なぜなら、そのような質問をすることは、経営者の責任を問うものと受け止めらる可能性があるからです。最悪の場合、経営者の感情を損ねることになり、深い溝ができてしまいます。

しかし、損失を回避できない事実は変わらないわけですから、経営者の側から貸倒損失があることを認め、それに関してどう対処していくのかという方針を表明すれば、銀行としても、支援の意向を打ち出しやすくなります。融資を受けている会社は、銀行に対して、ネガティブな情報を伝えたくないと考えることが一般的と思いますが、丸林さんのように、自ら銀行に対して積極的に説明を行い、銀行に隠しごとはないと認識してもらうようにすることが最善の対策だと、私は考えています。

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21世紀は勝てる戦略に組織が従う時代

[要旨]

20世紀前半は、組織が戦略に従う時代であったようですが、20世紀後半は、戦略が組織に従う時代であったようです。そして、21世紀は、勝てる戦略に合わせて、組織を育成する時代になっていると思われます。


[本文]

先日、私が制作しているポッドキャスト番組で、事業部制組織について説明したのですが、今回は、それに関し、チャンドラーとアンゾフの、それぞれの学説について説明したいと思います。20世紀初頭の米国では、ゼネラルエレクトリック、ゼネラルモーターズ、デュポンなどが、事業部制組織を導入するようになりました。

その背景には、会社の事業規模が拡大していった結果、製品や地域によって、異なる課題を持つようになってきたことから、その課題を、それぞれの製品や地域ごとに事業部をつくり、各事業部に解決を委ねることのほうが、会社全体で課題解決に取り組むよりも効率的であったからという事情があったようです。このような会社組織の変遷について、米国の経営史を研究していたチャンドラーは、1962年に出版した著書、「Strategy and Structure」の中で、「組織は戦略に従う」と述べています。

これに対して、ロシア系アメリカ人の経営学者のアンゾフは、自身のロッキード社勤務時代の経験などから、組織の能力には限界があり、とることができる戦略は限定されるという考えに至ったようです。そして、これについて、1979年に出版した著書、「Strategic Management」の中で、「戦略は組織に従う」と述べています。

両氏の学説は真逆ではあるものの、両氏とも、事実に基づいた分析結果を述べているところが興味深いですね。強いて言えば、あまり複雑な戦略が必要でなかった20世紀前半は、戦略に合わせて組織をつくることができたけれども、20世紀後半からは、複雑な戦略が必要とされるようになってきたので、組織に合わせた戦略しかとれなくなってきたということなのだと思います。

では、21世紀前半のいまは、どちらということになるでしょうか?複雑な時代だから、戦略が組織に従う時代でしょうか?でも、私は、複雑な時代だからこそ、経営者は、強い組織を育成して、高度な戦略をとらなければならない時代になっていると思っています。

すなわち、経営者は、競争に勝ち抜くための戦略を実践できる、強い組織を育成する能力が問われる時代になっていると思います。とはいえ、私の考えが正しいかどうかは、もう少し後になってからでないと、分かりませんね。そして、何が正解かを決めるのは、いま、まさに、経営に取り組んでいる経営者の方たちであり、そこに経営者としての仕事の面白みもあると思います。

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経営者保証解除のダブルバインド

[要旨]

経営者の方が、真摯に自社の事業の発展に努めていれば、銀行はそれを評価し、個人保証の解除に応じてくれるでしょう。一方で、保証の解除にしか目を向けていない経営者の方は、かえって、その目的の達成が遠のいてしまうでしょう。


[本文]

前回、「経営者保証を解除してもらえない原因は、会社の実態が個人商店のままだから」ということを書きましたが、もう少し補足したいと思います。これも、前回、述べましたが、銀行が融資相手の会社の経営者に対し、個人保証を求める理由は、規律付けの意味合いが大きいと書きました。とはいえ、銀行が経営者保証の解除に応じようとするときは、融資相手の会社の事業が組織的に行われているかどうかということよりも、もっと大きな要因があります。それは、事業で利益が得られているかどうかということです。事業が黒字であれば、融資が返済される見込みが高くなり、そうであれば、経営者保証の有無は、融資判断の要因としては、あまり重要ではなくなります。

ですから、極端なことを書けば、経営者がほぼ毎日のように、会社所有の高級車に乗り、会社が会員権を所有するゴルフ場に行き、ゴルフをプレーしていたとしても、事業が黒字であれば、銀行は経営者保証の解除に応じることはあり得ると思います。これは、融資を受ける側にも理解できることなので、業況が好調な会社の経営者の方は、融資を確実に返済できる自信があるので、銀行に対して、ひとこと、「自分が保証人にならなくてもだいじょうぶだよね」とだけ伝えることで、銀行も個人保証の解除に応じるでしょう。

一方、業況が好調といえない会社の経営者の方は、銀行に対して、自分が保証人から外してもらえるかどうか自信を持つことができないので、「どうすれば個人保証を解除してもらえますか」ということを、銀行に相談することになるでしょう。でも、このように銀行に伝えることは、ある意味、「自社の業況があまりよくないので、融資を返済できるかどうか、あまり自信がない」ということも伝えることになるという面があると言えると思います。

だからといって、私は、直ちに、「経営者の方は、自社の事業に自信を持たなければだめだ」ということを述べようとは考えていません。でも、経営者の方が第一に努力すべきことは、当然のことですが、事業を発展させることであって、経営者保証を解除することではないでしょう。それにもかかわらず、経営者保証の解除ばかりに目を向けていては、かえって、その目的は遠のいてしまうことになるのではないでしょうか。

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保証解除してもらえない本当の理由

[要旨]

融資を受けている会社の中には、経営者保証をなかなか解除してもらえない会社もあります。その理由は、銀行が解除になかなか応じないためと考えている会社が多いようですが、実態は、会社の経営が実質的に個人商店のままであるという面が考えられます。


[本文]

割合としては少ないですが、依然として、経営者保証の解除に関するご相談があります。その度に、(1)会社と経営者の関係の明確な区分、(2)財務基盤の強化、(3)適切な情報開示による透明性の確保、という、経営者保証ガイドラインに示されている、融資を受ける側の努力目標をお伝えしています。そして、これらは理解が難しくないものだと思います。しかし、なぜ、相談がずっと続くのだろうと考えていました。その点について冷静に振り返ってみると、相談してくる方の経営する会社は、あまり業績がよくないという点で共通しているようです。業績があまりよくなければ、銀行も経営者保証を解除したくないと考えるわけですから、経営者の方も、ずっと悩みが続くということになるのでしょう。

でも、ここで、ちょっと気づいたことがあります。もし、私の助言通りに、個人保証を解除してもらえるようになるための活動をしていれば、ほぼ、解除をしてもらえると思うのですが、それでも相談するということは、その活動がうまくいっていないということでもあるのでしょう。もう少し具体的に言えば、例えば、業績が改善すれば個人保証を解除してもらえるのに、業績が改善しないので、解除してもらえないままになっているということなのだと思います。ちなみに、銀行が融資相手の会社の経営者に、個人保証を求める背景としては、規律付け(経営者に対して、真摯に事業活動に臨んでもらうようにすること)が大きな部分を占めています。

このことは、裏を返せば、融資相手の会社で、事業活動が組織的に行われていることによって、経営者の独善的な判断が会社に悪い影響を与える余地が小さい状況にあると銀行が判断すれば、自ずと、銀行は、その会社の経営者に対して、保証を求めなくなります。(このような会社は、前述の経営者保証ガイドラインの、「会社と経営者の関係の明確な区分」が維持されている状態といえるでしょう)しかし、それがなかなかできない会社は、経営者保証を外してもらえずに、ずっと悩み続けることになるのでしょう。したがって、「銀行が個人保証を解除してくれない」という本当の理由は、「会社の実態が個人商店のままだから」ということになるからだと思います。

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