鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

レモン市場

経済学を学んだことがある方ならご存知と

思いますが、米国の経済学者のアカロフ

提唱した、「レモン市場」理論というもの

があります。


この「レモン市場」のレモンとは、文字通

りの果物のレモンのことを指しているので

はなく、「皮が厚くて外からは中身が分か

りにくい」という比喩から、中古車のこと

を指しています。


(ちなみに、「レモン」の対義語は、皮が

薄くて、品質の善し悪しがすぐにわかる、

「ピーチ」です)


では、中古車は、なぜ、中身がわかりにく

いレモンに喩えられるのかというと、故障

歴や事故歴は売り手しかわからない情報な

ので、買い手には調べようがないというこ

とからのようです。


それでは、「レモン市場(中古車市場)」

はどういう市場なのかというと、事故歴も

故障歴もないことが両者に分かっている新

車市場と異なり、売り手と買い手の間に、

持っている情報の差があるので、完全に自

由な競争が行われない市場になるというこ

とです。


そのため、買い手は、売り手に対して、本

当は事故歴のある自動車を、事故歴のない

自動車と同じ価格で販売しようとしている

かもしれないと考え、提示された価格を引

き下げようと考えます。


このことは、仮に、正直な価格を提示する

販売者がいた場合であっても、その販売者

も買い手に値引きを要求されるので、きち

んとした事業を営めなくなり、結果、正直

でない販売者しか残らなくなるという理論

です。


(ちなみに、私自身も中古自動車に乗って

いますが、実際の日本の中古車市場では、

このようなことは起きていないと思ってい

ますので、ここでは、売り手と買い手の間

情報格差がある例えということでご理解

ください)


では、「レモン市場」は、具体的にはどの

ようなものがあるかというと、私の事業で

もある、コンサルティング業など、無形の

サービスを提供する事業が該当すると思い

ます。


そして、顧客から値引き要求されてばかり

で、事業がうまくいっていない会社も、そ

の会社の事業が属する市場が、「レモン市

場」になっており、多くの悪質なライバル

もいると思われます。


このような状況に対する対策は、文字数の

兼ね合いで割愛しますが、逆に、「レモン

市場」のような事業への参入は避けるか、

または、イニシアティブを顧客に握られな

いような対策を十分に打ってから参入する

ことが望まれます。


逆に、「レモン市場」のような事業は、あ

る面で、算入しやすい事業でもあります。


算入が容易という理由で、参入してしまう

と、失敗する可能性も高いので、算入する

にあたっては、慎重に判断することが大切

です。

 

 

 

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ファミレスとSNSはライバル

日経ビジネスの2020年3月6日号に、

ファミリーレストラン大手のすかいらーく

ホールディングスが、3月1日に24時間

営業を全面的に廃止したことに関し、同社

の人財企画・運用グループの、匂坂仁ディ

レクターへのインタビュー記事が載ってい

ました。


(ご参考→ https://bit.ly/2TwNb3g


記事によれば、同社が24時間営業を廃止

した理由はひとつだけではありませんが、

SNSの普及で、若者がファミリーレスト

ランに集まらなくても、コミュニケーショ

ンをとることができるようになったことも

影響していると述べておられます。


このことは、ファミリーレストランは、業

種としては飲食店ですが、事業ドメイン

しては、コミュニケーションの手段を提供

する事業だったと言えるでしょう。


そのような観点から見れば、SNSは、異

なる業種であるにもかかわらず、事業ドメ

インが同じであることから、ファミリーレ

ストランから顧客を奪ってしまったことに

なります。


この事業ドメインは、それほど新しい考え

方ではありませんが、最近は、重要性が高

まってきていると思います。


その例として、以前、自動車メーカーのト

ヨタが、「トヨタは自動車メーカーでなく

なる、すべての人に移動する楽しさを提供

するモビリティカンパニー変わる」と宣言

し、事業ドメインを変えた例をお伝えしま

したが、これは、現代においては、自動車

メーカーという業種にとらわれていては、

正しい事業展開ができないというトヨタ

判断が、背景にあったと思われます。


(ご参考→ https://bit.ly/38ywpFk


すなわち、自社の事業ドメインを正しく定

義できるかどうかということが、競争を優

位に進めるための鍵になると思います。


トヨタの例以外では、最近のおもちゃ屋

んは、子どもにおもちゃを売る事業ではな

く、孫へのプレゼントを買ってもらうこと

で、高齢者に孫とのコミュニケーションを

提供する事業になりつつあります。


最後に、これを機会に、読者のみなさんの

会社も、自社の事業ドメインについてじっ

くりご確認いただき、より効果的な事業戦

略を作成するための契機にしていただくこ

とをお薦めしたいと思います。





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犬がいる理髪店

先日、弁護士の向井蘭先生が、向井先生の

フェイスブックのタイムラインに、店内に

犬がいる理髪店の写真を載せていました。


向井先生は、上海に事務所を持っており、

上海の理髪店を利用することがあるそうで

す。


その上海のローカルの理髪店のカット料金

は、50元~100元(750円~1,5

00円)だそうですが、同じ上海にある理

髪店であっても、日本人がオーナーの店の

カット料金は、300元(4,500円)

くらいだそうです。


とはいえ、両者のカット技術に大きな差は

ないのに、オーナーの衛生面に関する考え

方には差があるそうです。


すなわち、ローカルの理髪店は、平気で店

内に犬を入れるのに、高級店では店内に犬

は絶対に入れないそうです。


そこで、清潔にカットして欲しい客は、料

金が高くても、高級店でカットをするそう

です。


そして、向井先生は、犬のいる理髪店の写

真をときどき見て、自分も同じことをして

いないか戒めるようにしているそうです。


すなわち、犬を店内に入れる理髪店は、顧

客が本来望んでいることを理解できないま

ま、苦しい経営を続け、事業をなかなか軌

道にのせられないでいるので、向井先生自

身も自らの事業を拡大するための阻害要因

に気づかないままでいないか、注意するよ

うにしているそうです。


このような向井先生の姿勢は、「他山の石

以(も)って玉を攻(おさ)むべし」とい

う故事に通じる考え方であり、私が改めて

述べるまでもありません。


ただ、今回、向井先生の姿勢を記事にした

理由は2つあります。


ひとつは、自分のことはなかなか見えにく

いので、よほど注意しなければならないと

いうことです。


前述の、上海のローカルの理髪店も、店を

繁盛させたいと考えつつ、そうならない原

因を自分で作っており、かつ、その原因を

自分では気づかないでいるところが最大の

問題です。


ふたつめは、ひとつめの問題の、さらに踏

み込んだ原因ですが、業績が上向かない原

因は、自分(内部)によるものではなく、

環境(外部)にあるものと考えがち、すな

わち、自分にとって都合の悪いことは他人

の責任にしてしまいがちということです。


これは、人は自分を正当化する傾向がある

ので、こうならないようにするには、やは

りよほどの注意が必要になります。


むしろ、前述の理髪店と同様に、自社の事

業がうまくいかない会社の経営者が、その

改善点をなかなか見つけられないでいるの

は、その原因を外部にあると考えてしまう

からではないかと思います。


もちろん、事業の発展を阻害する要因は、

内部だけにあるとは限りませんが、見つけ

にくいところにこそ、ターニングポイント

になるようなものが潜んでいる可能性もあ

ります。


そして、向井先生が、弁護士として高い評

価を受けている理由は、向井先生ご自身が

前述のような姿勢で自らを律しておられる

からなのだということだと思います。


さらに、今回の記事の内容は、私にそのま

まそっくりあてはまります。


私に自身にも改善を要するところは多々あ

ると感じていますので、向井先生を見習っ

て、引き続き精進していきたいと考えてい

ます。





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コンサルタントは自分を不要にする役割

先日、心理セラピストのKさんが、Kさん

ポッドキャスト番組で、次のようなこと

をお話されておられました。


(ご参考→ https://bit.ly/38uZp0C


すなわち、Kさんはフリーランスになって

から13年経ったが、多くのクライアント

と知り合った反面、やがて、その知り合っ

たクライアントの多くが、自分から離れて

いくので、少し寂しさを感じるというもの

です。


でも、Kさんは、そのことが問題と考えて

いるのではなく、自分がクライアントの悩

みを解決できた結果として、クライアント

が自分から離れて行くのであり、そのこと

をうれしく感じているというものです。


これは、私のようなコンサルタントにも当

てはまることだと思っています。


コンサルタントが支援しているにもかかわ

らず、クライアントがいつまでもコンサル

タントから離れられないとすれば、コンサ

ルタントの腕が悪いか、仮に、コンサルタ

ントの能力に問題がないとしても、クライ

アントの事業が改善しないのであれば、そ

コンサルタントコンサルティングは意

味のないということになります。


ちなみに、私の行うコンサルティングは、

3か年で改善が終了することを目標として

います。


その3か年でコンサルタントとしての役割

が果たせたと感じてもらえれば、その時点

で、コンサルティングを「卒業」すること

となります。


(もちろん、いったん「卒業」したクライ

アントが、その時点で新たな課題が見つか

れば、「再入学」することもあります)


話がそれますが、私が、コンサルタント

クライアントの仕事の一部を請け負うべき

ではないと考えている理由は、面倒な仕事

を受けたくないという考えによるものでは

なく、コンサルタントがクライアントの仕

事の一部を請け負い続けていれば、その間

は、クライアントは「卒業」できないこと

になってしまうからです。


したがって、コンサルタントが親切を装っ

て、クライアントの仕事を進んで請け負お

うとしているときは、「クライアントに、

『卒業』されたくない」という意図がある

ものと思われます。


話を戻して、今回の記事の結論は、コンサ

ルティングを受けるということは、自社の

能力をステップアップさせることが目的で

す。


中には、「コンサルタントの力を借りて、

自社の業績を高めよう」と考えている経営

者の方がいますが、コンサルタントが力を

貸すのは、クライアントの業績を高めるこ

とではなく、クライアントに業績を高める

ための能力をつけてもらうことです。


このことは、多くの方が理解しているよう

で、あまり実践されていませんし、この違

いを理解した上でコンサルタントに接する

だけでも、理解をしていない会社とは、大

きく業績に差をつけることができるように

なると思います。

 

 

 

 

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人付き合いのストレス

先日、私が尊敬する、作家のMさんが、M

さんのメールマガジンで、亡くなったお母

さんのことについて書いていました。


Mさんは、都内にお住まいですが、地方の

都市のご出身なので、お母さんが亡くなっ

たとき、郷里に戻り、通夜と葬儀を営んで

来たそうです。


その時のことですが、Mさんは、お通夜が

終わったあと、家族とともに、お母さんと

10年以上のお付き合いのある知人の方た

ちとお話をしたそうです。


そして、知人の方のお話から、家では、き

つい性格の面を見せていたMさんのお母さ

んは、知人の方たちにとっては、とても温

和な方だったことがわかったそうです。


そのことは、はじめはMさんには信じられ

なかったそうですが、知人の方たちのお話

は社交辞令ではなさそうだったそうです。


そこで、Mさんのお母さんは、外ではいい

人でい続けようとしたために、ストレスを

ためこんでしまい、それがお母さんの病気

の原因になったのではないかと、Mさんは

考えたそうです。


そして、Mさんは、通夜のときにきいたお

母さんのことをメールマガジンに書き、ス

トレスをためると身体によくないというこ

とを、読者に伝えようとしたようです。


では、私は、なぜ、Mさんのメールマガジ

ンの内容を引用したのかというと、ただで

さえストレスを感じる立場にある経営者の

方は、さらに、自分をよく見せようとして

他人とつきあっていると、もっとストレス

がたまってしまい、事業がうまくいかなく

なってしまう可能性が高いということを、

述べたかったからです。


とはいえ、これも私が述べるまでもないこ

ととは思うのですが、Mさんのお母さんの

ように、人によって態度を変える経営者の

方を見ることがあります。


中には、客先では腰が低いものの、社内に

もどると、部下には厳しく接したり、従順

な態度を強要したりする経営者の方も、極

一部ですが、いるようです。


このようなことは、道徳的にも問題である

し、最近はパワーハラスメントとして批判

されるようになっているので、繰り返しに

なりますが、私が改めて述べるまでもない

ことです。


ただ、私がここでこのようなことを述べて

いるのは、そのような行為が問題というこ

とよりも、心が満たされていない経営者の

方は、リーダーシップを十分に発揮できそ

うにないので、事業もうまくいかないとい

うことをお伝えしたいからです。


経営者はリーダーであるわけですから、部

下たちの心が満たされていないときは、そ

れを満たしてあげるという大切な役割があ

るのに、逆に、自分の心を満たすために部

下たちを犠牲にしてしまっては、リーダー

としての役目を果たしていないことになっ

てしまいます。


さらに、多くの経営者の方の関心は、どの

ような事業戦略をとれば事業が成功するか

ということにあると思いますが、その前

に、まず、経営者の方の心が満ちており、

リーダーとして自信をもって組織を率いる

ことができる状態で起業する必要があると

考えている人は、あまり多くないように感

じています。


ここで今回の記事の結論ですが、経営者の

方は、事業戦略と同様に、組織運営にも関

心を持つべきということです。


もちろん、組織運営は、経営者の心が満た

されているだけでうまく行くわけではあり

ませんが、起業にあたっては、少なくとも

リーダーシップについても十分に検討する

ことは大切です。





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正味運転資金

前回の記事で、銀行から融資を受けている

会社は、銀行に対して、自社の事業の当事

者ではなく、協力者として接するべきと述

べました。


さらに、これ以外に、銀行との融資取引に

関し、中小企業の経営者の方が、銀行との

間に認識の開きがあると、私が感じること

に、資金不足になる原因をどう考えている

のかというものがあります。


とはいえ、これは、私だけでなく、多くの

人がすでに指摘していることなので、ここ

で詳しく述べる必要はないと思いますが、

それを簡単に述べると、事業活動で資金不

足になる要因には、売上が増えているとき

と、事業が赤字になっているときの、ふた

つの要因があるものの、経営者の方は、そ

の区別を理解していないことが多いという

ものです。


そして、銀行に対して不満をもつ経営者の

方の多くは、事業が赤字になっているにも

かかわらず、赤字であることには目が向か

ず、単に、資金不足であることのみを銀行

に訴えている方です。


それでは、自社が赤字であることに、経営

者の方が目が向かない要因として考えられ

ることは、経営者の方が会計を苦手として

いるということと、定期的に(可能であれ

ば、1か月ごとに)自社の業績を確認して

いないということです。


これに対する対策は、ストレートに、経営

者の方が、会計を学び、毎月、業績を確認

すること以外にありません。


では、今回、なぜ、資金不足の要因につい

て記事を書こうとしたのかというと、資金

不足が恒常化している会社には、資金運用

表を活用して欲しいと考えたからです。


ただし、資金運用表に関する詳細な説明は

割愛しますので、詳しく学びたい方は、拙

著「図解でわかる小さな会社の経営に活か

す会計いちばん最初に読む本」の54ペー

ジをお読みいただきたいと思います。


(ご参考→ http://amzn.to/1M3mszZ


とはいえ、資金運用表の作成も、最初は難

しいと思いますので、正味運転資金を確認

することからであれば、容易に着手できる

と思います。


正味運転資金は、資金運用表で計算される

項目のひとつであり、具体的には、次の計

算式で求められます。


正味運転資金=(売掛金受取手形+棚卸

資産)-(買掛金+支払手形)


この正味運転資金を確認する意義ですが、

売上高が増加していないにもかかわらず、

正味運転資金が増えていれば、それは赤字

が原因と考えられ、運転資金としての長期

融資の返済原資がなくなります。


これを言い換えれば、運転資金としての長

期融資は、一般的に、利益が確保できてい

れば返済に窮することはないということで

す。


したがって、資金繰が苦しく、運転資金と

しての長期融資の返済が難しくなっている

会社は、本当は、資金繰が苦しいのではな

く、事業が赤字の状態なのです。


ただ、決算を行わない段階では、赤字が明

確にならないので、資金不足のみが問題と

して浮き出てしまいます。


ですから、そのような会社が、本当に解決

しなければならないことは、銀行から新た

な融資を受けることではなく、赤字の状態

を抜け出すことなのですが、そのような会

社の多くは、銀行から融資を受けるだけで

その場をしのぎ、赤字の状態を抜け出す活

動まではしないため、ますます資金繰が悪

化するという悪循環に陥ってしまいます。


ここで、今回の記事の結論ですが、事業活

動が正常な状態(利益が得られる状態)で

あれば、運転資金としての長期融資の返済

は問題なく行うことができるので、経営者

の方は、融資の返済よりも、利益確保に注

力すべきということです。


そのためにも、資金運用表の活用や、正味

運転資金の確認は意義があります。


ちなみに、売上高が増加しているときは、

一般的に、正味運転資金が不足します。


そのような場合、銀行は、業績を評価し、

積極的に融資に応じてくれるでしょう。




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融資と出資

前回の記事で、「銀行から融資を受けてい

る会社は、返済に関して、意識を強く持つ

べきである」ということを書きましたが、

今回は、その理由について述べます。


それは、融資は返済しなければならないか

らです。


これは、当りまえ過ぎることなので、何を

言っているのだと思う方が多いと思います

が、伝えたいことは、融資は他人資本とい

うことです。


他人資本という言葉は、あまり耳にするこ

とはありませんが、その対義語の、自己資

本は耳にすることは多いと思います。


自己資本は、株主からの出資金が主なもの

ですが、この自己資本は、会社はずっとそ

のまま使い続けることができます。


このような面で、「自己」資本と言えると

思うのですが、「自己」は、もうひとつの

意味もあります。


それは、出資者、すなわち株主の意思を、

事業活動に反映させなければならないとい

うことです。


それは、具体的には、株主は議決権を持っ

ている、すなわち、会社は株主のものとい

うことです。


そして、会社が自己資本を自由に使えるの

は、会社の持ち主である株主の意図に従っ

て事業活動を行うからであり、そういう意

味で「自己」資本と言えます。


ただ、オーナー会社の場合、社長=株主な

ので、株主の存在を意識することはほとん

どないと思います。


話を融資に戻すと、融資は、「他人」であ

る銀行に、自社の事業活動に協力すること

を依頼し、それに同意を得て、資金提供を

してもらうものです。


したがって、これも当然ですが、会社に対

して資金提供をしているという役割では同

じでも、「他人」である銀行は、「自己」

であ株主よりも、資金提供をした結果に対

する責任は軽いことになります。


すなわち、貸手責任は株主責任より軽いと

いうことです。


その違いの具体的な例は、融資は、約束に

したがって返済を受けられること、事業の

業績が悪くなり、利益が少なくなっても、

約束通りの融資利息を得られることなどで

あり、この点では銀行は株主よりも負担が

軽くなっています。


ここまで、事業活動に対する資金提供につ

いて、会計的な意味について書いて来たの

ですが、お伝えしたいことは、銀行は、自

社の事業の当事者(自己)ではなく、協力

者(他人)であるので、協力の要請(融資

の申込)や、融資を受けた後の融資金の返

済は避けられないということです。


この結論も当たり前のことなのですが、一

方で、銀行に融資の申し込みをすることは

面倒であるとか、銀行は自社のことを理解

してくれていないと考える経営者の方を見

ることがあります。


そのような考え方をする経営者は、銀行に

対して、自社の事業活動の当事者であって

欲しいと考えてしまっているからだと思い

ますが、銀行は、協力者に過ぎないという

ことを理解すれば、その考え方は正しくな

いということが分かるでしょう。


もし、金融機関に対して、当事者として立

ち回ってほしいという場合は、ベンチャー

キャピタル(VC)という金融機関に出資

をしてもらうという方法がありますが、恐

らく、経営者にとっては、銀行よりもVC

の方が、資金提供をしてもらうための労力

が、何倍も大きくなると思います。





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