鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

事業計画書=経営戦略+事業体制

これまで何度か事業計画書の意義などにつ

いて書いてきましたが、まだ誤解をされて

おられる方が多いと感じたので、ここで、

改めて、これまでとは別の側面から事業計

画書について述べたいと思います。


まず、事業計画書を「事業の予想」ととら

えている経営者の方は少なくありません。


また、事業計画書を「事業の目標」と考え

ている方もいます。


これは、予想ととらえるよりも理解が深い

と言えますが、単なる目標と考えるだけで

は、事業計画書を意義のあるものとしてい

るとはいえません。


すなわち、これからの5年~10年間の売

上高と利益額を、単なる予想や目標とする

だけでは、経営者が「経営」をしていると

は言えません。


少なくとも、How(どうやって=経営戦

略)と、Who(だれが=事業体制)が明

確でなければ、事業計画書は単なる画餅

なってしまいます。


一方、経営戦略や事業体制が明確であり、

かつ、実現可能性が高ければ、事業計画書

の裏付けが強まり、かつ、それを達成させ

るための具体的な活動も明確になります。


このように、事業計画書のブラッシュアッ

プを行っていくことによって、事業活動が

より精緻なものとなるので、事業の競争力

も高まって行きます。


確かに、事業の中心的な活動は生産活動で

すが、競争力を高めるための活動は管理活

動であり、どちらも会社にとっては大切な

活動です。


このことはご理解いただける方が多いと思

うのですが、事業計画書の活用が競争力を

高めることになるということを認識してお

られる方は少ないと思います。


多くの経営者の方が、このことに気づいて

さえいただければ、もっと事業計画書の重

要性を認識していただける方が増えるもの

と私は考えています。

 

 

 

 

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役員報酬の高い会社は評価されない

前回の記事で、「役員報酬の低い会社は評

価されない」と述べましたが、今回は、そ

れとは逆に、「役員報酬の高い会社は評価

されない」ということについて述べたいと

思います。


会社の業績がよければ、それに従って、経

営者の報酬は高くなることは当然です。


ただ、いわゆるオーナー会社では、役員報

酬に対して課税される所得税の税率は累進

税率(金額が多くなるにつれて高くなる税

率)であるため、税率が33%となる年間

1,800万円で役員報酬を頭打ちにして

いる例が多く見られます。


一方、法人所得税の税率は一律であり、地

方などを含めた中小企業の実効税率は、約

34%と言われています。


そこで、仮に、経営者が役員報酬として受

け取ったお金も、会社に残したお金も、経

営者の判断で使うことができるものとすれ

ば、個人の所得税が会社の実効税率を下回

る範囲で役員報酬を受け取ることが、個人

と役員のトータルで支払う税額が、最も少

なくなることになります。


話を本題に戻すと、オーナー会社の役員報

酬は、前述のような理由から、あまり高額

にはなりません。


しかし、高額な役員報酬を支払っている会

社も、割合としては少ないですが、存在し

ます。


仮に、役員報酬を支払っても、会社の利益

が黒字であればそれほど問題とは言えない

のですが、中には、利益があまり残らない

状況であったり、赤字になってしまったり

する場合もあります。


そのような、会社を犠牲にしてまで、高額

役員報酬を受け取る理由は様々なのです

が、代表的なものは次のようなものです。


(1)経営者の趣味に多額の金銭を費やし

ている。


(例えば、高級車、船舶、飛行機、競走馬

などを所有し、また、維持するための費用

にあてている)

 

(2)子息などを医学部などに入学させる

ために、多額の教育費、寄付金などが必要

となっている。


(3)株式や金融派生商品などに投資をし

ている。


(4)自社の属する業界などとの付き合い

を深めるため、多額の費用が必要になる。


(なかには、いわゆる「使途不明金」など

も含まれる)


銀行は、このような会社に対しては、利益

が安定していれば別ですが、利益が少ない

か赤字の場合は、融資を躊躇します。


その理由としては、会社の事業が不安定と

いうこともありますが、会社への融資が、

役員報酬として経営者に支払われ、実質的

に事業資金以外のことに使われてしまうと

いう状態になりかねないからです。


役員報酬が高いことそのものに直接的な問

題はありませんが、高額な役員報酬が必要

な場合は、それに見合った会社の利益が得

られていることが前提になるということは

言うまでもありません。


また、経営者にとっても、高額な役員報酬

によって、会社の事業が立ち行かなくなっ

てしまえば、経営者にとってもそれは望む

ことではないでしょう。

 

 

 

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役員報酬の低い会社は評価されない

これは意見が異なる方もいますが、私が銀

行勤務時は、役員報酬も会社の利益と考え

て融資審査をしていました。


なぜなら、いわゆるオーナー会社では、会

社と経営者は実態としてはひとつであるこ

とと、役員報酬は経営者の一存で決めるこ

とができるからです。


すなわち、会社の利益を、会社に残す場合

内部留保であり、役員個人の貯蓄として

残す場合は役員報酬として役員に支払われ

るということです。


具体的な数字で示すと、役員報酬が5,0

00万円で会社の利益が1,000万円の

A社と、役員報酬が2,000万円で会社

の利益が2,000万円のB社では、会社

単体ではB社の方が利益が多く成績がよい

と言えます。


しかし、前述のように、会社を全面的に支

えている経営者の報酬まで利益ととらえて

考えれば、A社の方が業績がよいと考える

ことができます。


(ただし、役員報酬の金額の決定は、厳密

には株主総会の承認が必要であり、事業年

度の中途で変更することによって税務上の

問題も起きるなど、一定の制約があります

が、ここでは詳細な説明は割愛します。

https://goo.gl/Ybim3a


とはいえ、利益があまり多くないた状況で

は、役員報酬を減らして会社を黒字にした

いという考え方も理解できます。


その一方で、オーナー会社の経営者は、そ

れなりの責任を負って会社を経営している

以上、あまり低過ぎる役員報酬は不適切で

しょう。


具体的な金額は会社の事情によって異なり

ますが、一般的な役員報酬の相場と比較し

て自社の役員報酬が低い場合は、その相場

との差額は役員が会社へ寄付していること

と変わらないことになります。


また、もし相場通りの役員報酬であれば、

会社の利益額はどれくらいになるのかとい

うことも、融資審査においては考慮される

でしょう。


繰り返しになりますが、会社の決算を黒字

にするために、役員報酬を減らすという対

応も選択肢のひとつとは思いますが、それ

は根本的な解決方法ではないということで

す。


本来は、一般的な相場程度の役員報酬を支

払った上で、会社が黒字となることを目指

すことが基本ということが今回の記事の結

論です。

 

 

 

 

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気に入らないことが自分のために成る

先日、岡山県倉敷市にある真言宗の寺院、

高蔵寺の住職の天野高雄さんのメールマガ

ジンを読みました。


(ご参考→ https://goo.gl/aZgqBW


「私は、『気に入らないことが自分のため

に成る』という言葉を呪文にしています。


というのは、毎日、たくさんの不平が口か

ら出て、他人の粗探しに目をギラギラさせ

ていることに気づき、自分自身に呆れてし

まうことがあるからです。


そんなとき『自身の気に入らないことが自

分のために成るんだ!』と呟きます。


なかなか進歩しませんが、それでも昨日よ

り今日という具合に、一歩ずつでも苦手な

ことを克服できるよう励んでいます」


真言宗の総本山、金剛峯寺で厳しい修行を

積んだ高野さんでさえ、このようにご自身

を戒めておられるわけですから、私のよう

な凡人は、なおさら徹底しなければならな

い心がけだと思います。


そして、これも言及するまでもありません

が、ビジネスにも共通する考え方だと思い

ます。


私も実際に、会社経営者で、あえて耳の痛

いことを言ってくれる人を自分のそばに置

いたり、10年間など一定の期間を経たら

自分の地位を後進に譲ることにしていて、

それを実践したりした方を知っています。


一方で、自分の思いを実現するために、リ

スクをとって独立起業したり、同僚の何倍

も働いて重役に昇進したりして、大きな権

限を手に入れた方にとっては、「気に入ら

ないことが自分のために成る」という言葉

は、目的の達成を遠ざける考え方であると

受け止めるかもしれません。


そのような方は、「自分の考え方でビジネ

スを実践する=事業を成功させる」という

前提でそう考えているのでしょう。


確かに、実際にそうなることもあると思い

ますが、自分ひとりで考えた方法は、多く

の場合は失敗してしまうということは、以

前にも書きました。


(ご参考→ https://goo.gl/kyUbm9


そして、「自分の考え方でビジネスを実践

する=事業を成功させる」と考えている方

は、比較的短期間でビジネスが成功すると

いう前提に立っていると思います。


でも、これも当たり前のことですが、会社

の事業は、半永久的に続くものであり、よ

り普遍的な考え方に基づいて事業に臨まな

ければ、一時的に事業に成功することはあ

るとしても、本物の成功に至ることは難し

いでしょう。


繰り返しになりますが、会社の事業は長期

間にわたるものであり、また、多くの方を

巻き込むものであることから、どんなに優

秀な人でも、ひとりの考えだけで成功する

ことは容易ではありません。

 

むしろ、自分と真逆な人の考え方をいった

ん受け入れることの方が、本物の成功にた

どりつくための近道になるのではないかと

いうことが、今回の記事の結論です。

 

 

 

 

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社長の給料は天井がないが底もない

今回も、前回に引き続き、古屋悟司さんの

ご著書、「『数字』が読めると年収がアッ

プするって本当ですか?」から、私が注目

したところをご紹介したいと思います。


過去の古屋さん自身である主人公は、花屋

を開業しましたが、当初は、次のような状

況だったようです。


「朝5時に起きて、市場で花を仕入れ、店

にもどって商品を並べ、開店の準備。


営業時間内は、花を配達をしたり、銀行へ

釣銭用の硬貨の両替に行く。


閉店したら、レジを締め、月末日であれば

給与の支払いをする。


年中無休を掲げて出店したので、休日もな

い。


教材販売会社の営業マンの時は、教材を売

るだけで売上の20%をもらえたが、いま

は、売るだけでなく仕入や店舗管理など、

1から10まで全部自分でやって、売上の

10%も会社に残らない。


そして、営業マンのときも、教材が売れな

ければ給料がゼロだったけれど、いまは売

上が減ってしまえば、給料がゼロどころか

借金が増えてしまう」


この古屋さんの会社のかつての状況は、多

くの中小企業でも見られる状況ではないか

ということを、私の中小企業のご支援の経

験から感じています。


しかし、古屋さんは、前回までに述べて来

たように、商品の値上げをするという抜本

てきな改善をすることにしたのですが、一

方で、多くの会社では、銀行に融資を受け

て解決をしようとしていると思います。


確かに、融資を受ければ、当面の商品仕入

代金や従業員の給与支払資金を確保できま

す。


でも、それは根本的な対策ではなく、もし

獲得できる利益が少ない状況が続いたり、

赤字の状況が続いたりすれば、融資だけが

増え、銀行からの支援は受けられなくなっ

てしまうでしょう。


今回の記事の結論は、融資を受けることに

よって当座の資金不足を解消するという短

期的な問題を解決することはできますが、

事業を継続できるようにするという、根本

的な課題の解決にはならないということで

す。


このことはここで改めて述べるまでもない

ことなのですが、古屋さんのご著書を読ん

で、利益を得る事業体質にならなければ、

融資が膨らむだけに終わる、すなわち、底

なしの状態から抜け出せなくなるというこ

とを改めて感じました。


もし、業況の芳しくない経営者の方が、現

状を変えるための決断をせず、問題を先送

りするだけなのであれば、経営者としての

役割を十分に果たしているとは言えないで

しょう。


そして、繰り返しになりますが、そのよう

な経営者の経営する会社に対しては、銀行

からの支援は長くは続けてもらえません。

 

 

 

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利益=売上ー仕入ー経費

今回も、前回に引き続き、古屋悟司さんの

ご著書、「『数字』が読めると年収がアッ

プするって本当ですか?」から、私が注目

したところをご紹介したいと思います。


過去の古屋さん自身である主人公は、花屋

を開業した時、古屋さんが以前出版したご

著書、「『数字』が読めると本当に儲かる

んですか?」のタイトル通り、「『数字』

が読めると本当に儲かる」を実感したそう

です。


すなわち、古屋さんは会計が苦手であった

ものの、損益計算書は足し算と引き算で作

られていること、損益計算書に出てくる専

門用語は難しいけれど、「利益=売上ー仕

入ー経費」という構造を理解できれば、売

上総利益や営業利益などの専門用語の意味

が分かるようになったそうです。


このことがターニングポイントとなり、利

益を増やすには、売上だけでは決まらない

ということを、古屋さんは理解できたそう

です。


そこで、自社が赤字だったときの損益計算

書を見て、その期はどれくらい売上を増や

し、どれくらい経費を減らせば、利益が出

るようになったのかということも理解でき

るようにったそうです。


したがって、赤字の時の損益計算書から、

黒字となる理想の損益計算書にするために

はどうすればよいかということが分かるよ

うになったということです。


このことによって、古屋さんは、その理想

とする損益計算書を目標にして、商品の値

上げや経費の削減などを試してみたくなっ

たそうです。


今回の記事のひとつめの結論は、「利益=

売上ー仕入ー経費」(または、「売上=仕

入+経費+利益」)という構造を理解でき

ると、利益を得るためには何をすればよい

かという方法が具体的にわかるようになる

ということです。


そして、ここからは、古屋さんの本には書

かれていないのですが、私が、これまで、

中小企業の事業改善のお手伝いをする中で

助言していることを述べます。


すなわち、赤字の会社にたいしては、「仕

入≒変動費」、「経費≒固定費」と捉え、

改善策を考えて欲しいと助言しています。


これを言い換えれば、経費は固定的なあ

り、売上が多くても少なくても変わらない

から、売上と仕入の差、すなわち粗利益

(=売上総利益)が経費を上回るような戦

術を実践しましょうということです。


しかし、売上を増やすことが難しい場合も

あるので、そのようなときは、粗利益を下

回るように経費を減らすように工夫してみ

ましょういうことです。


これが、ふたつめの結論です。


損益計算書は、とっつきにくい専門用語が

あるかもしれませんが、構造さえ理解でき

れば、改善のために何をすればよいかとい

うことが分かるようになるということを、

古屋さんの本を読んで感じました。

 

 

 

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ものではなくしくみで勝負

今回も、前回に引き続き、古屋悟司さんの

ご著書、「『数字』が読めると年収がアッ

プするって本当ですか?」から、私が注目

したところをご紹介したいと思います。


(ご参考→ https://amzn.to/2NYaMDN


古屋さんをモデルにした主人公は、2つの

会社の営業マンのキャリアを経た後、花屋

を開業しましたが、忙しさの割にはもうけ

が少なく、将来の展望が見えないでいまし

た。


そんな中、最も優秀な社員が、給料の安さ

や将来への不安から会社を退職し、残った

社員も不満を持った状態でした。


そこで主人公は、現状を打開するために、

商品の値上げをすることを決断をしたので

すが、その時、社長である主人公は、社員

に次のようなお話をします。


「これまでは、商品を安くして、たくさん

売ればよいと思っていたが、みんなも実感

している通り、それではもうからないこと

がわかった。


そのような状態では、給料を上げることが

できないし、社員のみんなも働いていて楽

しいとは感じないだろう。


そこで、これからは、商品を値上げして、

ちゃんともうかる会社にしたいと思うが、

そのためには、値上げしてもお客さまから

支持され続け、ありがとうとお礼を言われ

るようにならなければならない。


そのためには、梱包をきれいにしたり、ミ

スをゼロにしたり、お客さまへの対応を丁

寧にしていくことにこだわって欲しい」


実は、これはシンプルな戦術で、批判する

人はほとんどいないと思います。


しかし、シンプルであるがために、実践し

ようとする方もあまりいないのではないで

しょうか?


例えば、もし、経営コンサルタントが「こ

れからは、他社との差別化を図るために、

梱包をきれいにしたり、ミスをゼロにした

り、丁寧に対応したりする戦術を実践しま

しょう」と提案したとしたら、「そんなこ

とではなく、もっと、効率的で効果のある

方法を教えて欲しい」という要望を持とう

とする経営者の方が多いのではないでしょ

うか?


文字数の兼ね合いから端的に説明すると、

製品や商品そのものでの差別化はできなく

なっている経営環境では、「売り方」で差

別化をしなければならないものの、それを

実践できるスキルを持った会社(経営者)

は少ないということです。


これについては、「モノを売るのではなく

コトを売る」とか、「メリットを提供する

のではなく、ベネフィットを提供する」と

いう表現で説明されることもありますが、

確かに、これを一朝一夕には実現すること

は容易ではありません。


そこで、前述のように、売り方による差別

化を経営コンサルタントが提案したとして

も、価格の勝負に戻ろうとする経営者が多

いのではないかと私は考えています。


では、どうすれば「売り方」での差別化を

実現できるようになるのか、ということに

ついては、別の機会に述べたいと思います

が、今回の記事の結論は、これからは「売

り方」という「しくみ」で勝負する時代に

なっているということを、経営者の方が認

識し、やや高度なスキルを必要とする、し

くみづくりに注力していかなければならな

いということです。

 

 

 

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